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ホラーテラー作品群保管庫

141なつのさんシリーズ「やまびこ」1:2014/06/14(土) 20:44:58 ID:Hpd3syqU0

以下は友人のKから聞いた話だ。

………………
季節は夏で、俺は当時小学校の高学年くらいだったと思う。
家族で父方の親戚の家に泊まりに行った時のことだ。毎年一度はやっている親族の集まりだった。
夜、酒を飲むばかりの大人たちに退屈していた俺と四つ年上の姉貴は、
何か面白いものはないかと探し回り、ついに隣の村で祭りをやっているという噂を聞き付けた。
そしてこれはもう行くしかないと、無理やり親戚のおじさん(下戸)を一人引っ張って、車を出してもらった。
おじさんの話によれば、その祭りは『やまびこ祭り』 という名前らしい。
なんでも、その周辺には昔から『やまびこは山の神の返事だ』という言い伝えがあり、
豊作や雨を願う際、他にも何か願い事がある時には、
山の頂上付近にある突き出た岩の上から叫ぶ、という風習があった。
『やまびこ祭り』 という名前はそこから来ているらしく、
今でも祭りの終盤には子供たちが山に登り、自身の願い事を叫ぶ行事があるそうだ。
聞けば、おじさんも子供の頃祭りに参加して、叫んだことがあるんだとか。
「おじさんは、何て叫んだんです?」
行きの車の中で姉貴が尋ねる。
「『頭が良くなりますように』 ってな」
おじさんは「ははは」と笑った。俺と姉貴も遠慮なく笑った。

移動手段が車だったので、そう時間はかからなかった。
祭りのある村も含め、周辺地域自体が山間のそこそこ高い位置にあるんだが、
祭りの会場は、もう少し山を上ったところにあるダム湖の横の広場だった。
俺たちがついた頃にはもう祭りは始まっていた。
広場の中心にはステージがあって、広場の周りをぐるりと囲むようにたくさんの提灯と屋台が並んでいた。
田舎の小さな祭りだと思っていたんだが、人の集まりもにぎわいも思ったよりある。
二時間後に車に戻って来ることをおじさんと約束して、ついでに少々の小遣いをせびって、
俺と姉貴は祭りの人混みの中へと溶け込んでいった。

まずは綿菓子やイカ焼きを買って食べる。
しかしまあ、祭りで売っている食べ物はどうしてあんなにうまそうに見えるのか。
腹も満足したところで、姉貴が「金魚すくいがしたーい」と言うので、それに付き合った。
「わたし昔さ、金魚すくいの『すくい』 の部分って、救いの手を差し伸べることだと思ってたんよね。
 金魚たちは悪い人に捕まってて、助けてあげなくちゃってね」
「うわ、馬鹿じゃん」
「うっさい、若かったの。
 でさ、前の年にやぶれた金魚すくいの網を一本いただいて、次の年に自分でやぶれない紙張って持ってったの。
 さすがに百匹超えた時点で止められたけど、でも、あの時の店のおじさんの顔ったらなかったわー」
もう言うまでも無いが、俺の姉貴は少し変わっている。いや、少しじゃないな。
ふと見上げると、金魚すくいをしている俺らの会話を、店の店主が険しい顔で聞いていた。
マズイかなと思った俺は二,三匹救った時点でわざと失敗して、やぶれた紙を店主に見せた。
姉貴は空気を読まずに三十匹ほど取ってたけど。
姉貴はその内の二匹だけを袋に入れてもらって、アカとクロという名前をそれぞれつけた。俺は金魚はもらわなかった。
そんなこんなで、俺と姉貴は祭りを十二分に楽しんでいた。


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