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ホラーテラー作品群保管庫
139
:
なつのさんシリーズ「UFOと女の子 冬」5
:2014/06/14(土) 20:42:06 ID:Hpd3syqU0
屋上。
そこにはあの銀色をしたアダムスキー型のUFOがあるはずだった。
そして夏の光の中、確かにそれはあった。
僕は急いでその傍へと駆け寄った。早くしないと僕に掛かっている魔法が切れてしまいそうで怖かった。
けれど目の前まで来ても、確かにUFOはそこにあった。
小さい頃は届かなかったそのボディを、僕はそっと手で触れてみる。ザラザラとしたプラスチックの手触り。
僕は縄ばしごに手をかける。入口の穴は頭のすぐ上にあった。
この中に居るのだろうか。
けれども、そこでふと立ち止まる。
このままUFOの中に入ってしまって良いのだろうかという疑問が降って沸いてきた。
いまだ魔法は解けず、僕はしっかりとあの日の夏の屋上に居る。
けれどもだ。僕は本当にこのUFOの中に入ることが出来るのだろうか。
出来る。と答える自分が居た。
でも、もし本当にそれが出来てしまったら。
縄ばしごに足をかけて、僕の身体が地面を離れた瞬間……。
この幻覚は、幻覚で無くなってしまうのではないか。
『……どうしたの?』
すぐ頭の上から声がした。聞き覚えのある懐かしい声。
縄ばしごを持ったまま、あまりの唐突さに僕は息をするのも忘れていた。
『入って来ないの?』
彼女の声。
この声すらも僕の脳が創りだした幻なのだろうか。それとも。
『お話ししようよ。私が引っ張って上げようか?』
入口の穴から小さな手がこちらに向かって伸びてきた。掌を上に。顔は見えない。手だけだった。
もしその手を握ればもう戻れない。そんな予感があった。
たっぷりの戸惑い。数秒の迷い。そして一瞬の躊躇。
そうして僕は、自分の右手をそっと彼女の手に重ねた。
重ねて、離した。
彼女の小さな手には、ラムネ菓子や、飴玉が入った袋が乗っていた。五十円分。
それをきゅっと握って、手がUFOの中へと戻っていく。
「ごめん。僕は乗れない。友達を待たせてあるから」
少し僕の言葉を吟味するような間があった。
『……ともだち?』
「うん」
『ともだちが、できたの?』
「うん」
『それは、良いともだち?』
「うん」
懐かしい。昔もこうだった。彼女が質問して、僕が答える。
『私も、良いともだちだった?』
「うん。……もちろん」
何か冷たいものが頬に触れた。
雪だった。
夏のデパートの屋上に、粒の細かい雪が風に乗ってちらほらと舞い降りていた。
そろそろ魔法が解けるのかもしれない。いつの間にか手にしていたはずの縄ばしごの感覚が消えていた。
周りの子供たちの声もしなくなった。
もう残っているのは、目の前の銀色のUFOだけだ。
僕はそれが消えてしまわない様、目を逸らさずにじっと見つめていた。
不意にUFOの入り口の穴から、こちらを覗きこむように女の子が顔を出した。
そして、にこりと笑った。僕の記憶にあるそれと寸分違わない笑顔だった。
『おかし、……ありがとう』
返事をしようとした僕の目に雪が入って、一瞬、瞬きをした。閉じて、開いて。
それだけでもう僕の目の前にUFOは存在していなかった。
雪の降る屋上には人影も無く。足元にUFOを支えていたボルトの跡があるだけだった。
僕はしばらくの間、何もしないで、ただ空を見上げていた。
僕は一体、何を見たのだろう。Sに言わせると、幻覚幻聴、または妄想ということになのだろう。
そして僕は、ふと自分の手の中にあるものを見やった。
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