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ホラーテラー作品群保管庫

132なつのさんシリーズ「UFOと女の子 夏」2:2014/06/14(土) 20:37:01 ID:Hpd3syqU0
けれども女の子はまるで怯まなかった。
「うん。でも……、でも、わたしはあなたのこと、知ってるよ」
僕は驚く。僕と彼女はどう考えても初対面だった。それとも実は同じ学校に通ってるとかだろうか。
「あなたはキミでしょ。アンタでもあるし、お前にもなるね。それと、人間で、男の子。たぶん私より年下ね。
 今お菓子を持っていて、わたしのぜんっぜん、『知らない人』 ……
 ほら、あなたのことだって、もうこんなに『知ってる』んだから」
ぽかんとする僕に、女の子はもう一度「だから、ください」と掌をこっちに押し付けて来る。
正直意味が分からなかったけれど、勢いに負けたというか、返す言葉も思いつかなかった僕は、
黙ってラムネを分けてあげた。
「ありがとう」
そう言って女の子はにこりと笑った。
笑うと可愛い女の子だった。

それから僕たち二人は、むしむしと暑いUFOの中でおしゃべりをした。
といってもほとんど女の子が何か尋ねて、僕が答えるという形だったけれど。
女の子が訊き出し上手だったのか僕が隠し下手だったのか、
その日のうちに僕は名前から住所から洗いざらい吐かされて、
しばらく経った頃には、女の子にとっての僕は本当に、『知らない人』 から『知っている人』 へと変わっていた。
買った駄菓子も結局半分くらい食べられた。

どれくらい話しただろうか。そのうち窓の方を見やった女の子が、「お父さんだ」と声を上げた。
見ると、外に黒い野球帽を被った男の人が立っていた。
「迎えが来たから、もう行くね」
「……あ、待って」
UFOの中から出て行こうとした女の子を僕は呼びとめる。
色々と訊かれるままに答えてしまったし、お菓子は半分食べられたし、このまま帰してしまっては僕だけが損した形になる。
それに、僕はまだ彼女の名前も訊いてなかった。
「名前を教えてよ」
女の子がこっちを振り返った。その顔は何か思案している様だったけれど、やがてにこりと笑って、こう言った。
「うちゅうじん」
「え?」
「ワタシハ、宇宙人デス」
自分の喉を小刻みに叩きながら、女の子は震える声でそう言って、にこりと笑った。
ひとり分の重量がなくなったUFOがぐらりと傾き、僕だけが船内に残される。
ぽかんと口を開けたまま、天井に取り付けられた窓から青い空を見上げた。
自分を宇宙人だと言った女の子のまぶしいくらいの笑顔が頭に残っていた。
確かに宇宙人だ。とその時は思った。


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