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ホラーテラー作品群保管庫

101なつのさんシリーズ「Sとの出会い」5:2014/06/14(土) 01:20:43 ID:Hpd3syqU0
キィー……、キィ、キィ
背後であの音がした。大きい。何かが僕に近づいてきている。Kじゃない。Kはもう病室を出ている。
心臓が派手に脈打つ。息が出来なくなる。振り返れない。
キ……、……
音が止んだ。
誰かがそっと僕の上着の裾を引っ張った。丁度小さな子供が下から裾を引く様に。
意識の糸は極限まで張りつめ、失神しても何らおかしく無かったと思う。
その時、開いたままのドアから光の筋が射しこんできた。
「うおおっ!?」
誰かが奇声を上げた。悲鳴では無く奇声。Kが戻ってきたのだ。彼は僕の背後に居るナニカを見たに違いない。
ただ、その奇声のおかげで、僕は自身のコントロールを取り戻した。
足が動く。僕はわき目も振らず扉へダッシュし、病室を飛び出た。
その際にKと肩がぶつかったけれど、「ごめっ」と一言、構うこと無く一階ロビーへ続く階段を駆け降りる。
Kも後から走って追いついてきた。
受付の中に飛び込み、入って来た窓から外へと出る。
それでもまだ安心できず、僕とKは走って走って、すごい速さで門をよじ登り飛び越えた。

車のドアを開き、中に滑り込む。そこでようやく僕は病室からずっと止まっていた呼吸を再開した。
Sが突然の僕らの帰還を、驚いた様な呆れた様な目つきで見ていた。
僕は息を整えるので精いっぱい。Kは脂汗を浮かべながら、「あーやべえ、あれはやっべえ」と何度も繰り返していた。
シートに深くもたれかかる。怖かった。でも、助かった。
全身の力が抜ける。
例えば、ホラー映画ではこの瞬間が一番危ない。
コツ……コツ……
身体中の産毛が逆立つような感覚。反射的に飛び起きた。
誰かが車をノックしている。
僕が座る助手席の窓。僕はその方向を見てしまった。
白い手がガラスの下の方を叩いている。
「だあS車!」
Kが叫ぶ。彼にも見えたらしい。
二人がパニック気味になる中、只一人Sだけは怪訝そうな顔をしていたが、何も言わずエンジンを掛けた。
例えばホラー映画ではこう言う場合、得てしてエンジンが掛からないものだが、そんなことは無かった。
車はUターンするために一度バックする。
見えた。
それは車イスだった。それと、車イスを動かす白く細い手。
僕に見えるのはそこまでだった。後は何も見えない。誰が乗っているのかも分からない。
ただそれが何であれ、生きた人間でないことは確かだった。
「くっそが!病院外まで追ってくるとか……、おまっ……、ルール違反だろが!」
Kがその車イスに向かって叫ぶと、それに呼応するかのように、滑る様にイスがこちらに向かってきた。
「だああSもっと飛ばせよ!」
走り始めた車の速度は時速四十キロ。あの車イスはそれについてきている。
僕の頭は恐怖のためか、それとも単に混乱していたのか、
あの車イスにはたぶんターボが内蔵されているのだな、などとそんなことを思っている場合ではもちろん無いのだけれど。
「車イスは車だけど車じゃねえぞオイ!」
Kも同じ気持ちだったらしい。
そして彼が後ろに向けてツッコミを入れた瞬間、急ブレーキと共に僕らの乗った車が停止した。
それがあまりに突然だったので、後ろを向いていたKは慣性の力で後頭部を座席にしこたま打ち付ける。
僕はいつもの癖で無意識にシートベルトをしていたので助かった。
止まった。止まったら、追い付かれる。
「Sく……、だ、S君?」
慌てふためきながらSを見ると、彼はちょっと上を向いて、あーう、と長いため息を吐いた。欠伸だったのかも知れない。


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