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なめなめおじさんに聞いて見るスレ
52
:
エッチでリッチな なめなめおじさん
◆sQELVfrnG.
:2014/04/10(木) 21:44:36 ID:KF9ms4Nc0
■お金のいらない国
ふと気がつくと、私は見知らぬ町に立っていた。ビルが立ち並び、車が行き交い、大勢の人々が歩いているその町は、一見、私が住んでいる町に似ていた。しかし、確かに私の町ではなかった。空は青く、空気は澄んでいた。建物も車もどことなく私の知っているものとは違っていた。また、その町にはさまざまな人種がいるようだった。でも不思議なことに言葉は誰とでも通じるらしく、皆、楽しそうに語り合っていた。暫く呆然と立っていた私の側に、一人の日本人らしき人が近づいて来て私に話しかけた。
「ようこそ。お待ちしておりました」
ダークスーツをさり気なく着こなしたその人は、四十代半ばくらいの品のいい紳士だった。しかし誰なのか、私は全く覚えがない。戸惑っていた私に、彼は言った。
「どうぞ私について来てください」
さっぱり訳が分からなかったが、とても悪い人には見えなかったので、私は彼の後について歩きだした。そこは、やはり私の町とは違っていた。すべてのものが美しい。決して絢爛豪華というのではない。どちらかといえばその逆で、建物も車も非常にシンプル。しかし、機能美というのか、まったく無駄のない、とても好感の持てるデザインがされていた。町並みに見とれながら少し歩くと、彼は一軒の喫茶店らしき所に入った。広くはないが小綺麗な店で、わたしたちが席につくなり、ウェイトレスがメニューを持って来て言った。
「いらっしゃいませ。何にいたしましょうか」
そのウェイトレスは可愛らしい顔をした黒人女性だったが、日本語が話せるらしかった。紳士は私にメニューを渡し、何を注文するか聞いた。私は何も見ず、とっさに
「あ、コ、コーヒーを…」
と言った。紳士はウェイトレスにメニューを返しながら
「コーヒーをふたつください」
と言った。その丁寧な注文の仕方が、妙に私の耳に心地良かった。
「かしこまりました」
ウェイトレスは、にっこり笑って厨房の方へ去って行った。
少し沈黙があってから、私は紳士に聞いてみた。
「あのう…」
紳士は微笑んでいる。
「ここはどこなんでしょうか」
紳士は暫く黙っていたが、やがて言った。
「さあ、どこでしょう…」
「は」
私は唖然としてしまった。こいつ、人のよさそうな顔をして、私をからかうつもりなんだろうか。だいたい、何のために私をここへ連れてきたんだ。私は質問を変えてみた。
「あなたはどなたですか。私のことをご存じなんですか」
紳士は微笑んで言った。
「いずれ、お分かりになると思いますよ。悪いようにはいたしませんから、今は私について来てください」
私は全く納得がいかなかったが、見知らぬ町に一人で放り出されても仕方がないので、ひとまずこの紳士の言う通りにしようと思った。やがてコーヒーが運ばれてきて、私たちは黙って飲んだ。紳士は相変わらず微笑んでいた。私はさっぱり訳が分からなかった。でも、コーヒーはとてもうまかった。暫くして紳士が言った。
「じゃ、そろそろ行きましょうか」
どこへ行くんだか知らないが、私はうなずいて席を立った。紳士はそのまま店を出ようとした。私は驚いた。私にコーヒー代を払わせるつもりだろうか。どうしたらいいかわからないまま、私も紳士の後に続いて店を出てしまった。さっきのウェイトレスが呼び止めると思ったのに、彼女はにっこり笑って私たちを見ている。おまけに彼女はこう言ったのだ。
「ありがとうございました。またお越しください」
紳士はスタスタと歩き出している。私は瞬間的に考えた。そうか、あの店はこの紳士の行きつけで、きっとコーヒーチケットを預けてあるに違いない。私は、なあんだと思った。しかし、見ず知らずの人におごってもらうのも悪いなと思い、お金はとらないだろうとは思ったが、一応、聞いてみることにした。
「あのう、いくらでした」
紳士は驚いたような顔で私を見た。
「いくらって、何がですか」
「え、あの、コーヒーですよ。今、飲んだ」
「はあ」
「いや、ちゃんと割ってくださいよ。悪いですよ」
紳士は不思議そうな顔をして言った。
「割るって何を割るんですか」
私は少しイラッとした。こいつ、やっぱり私をからかってるんだな。ああ、さっきちゃんとメニューを見ておけばよかった。私はきっぱり言った。
「コーヒー代ですよ。お金払いますから値段教えてください」
「おかね?…ねだん?…なんですか、それ」
私は呆れてしまった。こいつ、一体どこまでとぼけるつもりなんだ。ほんとにふざけた野郎だ。でもまあ、いいか。おごってくれるというのなら、私が損するわけでもないし。
つづく
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