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小谷野 コピペ

196名無しさん:2007/10/02(火) 04:04:32
 そうなのだ。委員会は、鶴田、モストウ、クレイマーで構成されていたのだ。

 寮に戻った私は、むろん何も手に付かず、カナダの煙草、プレイヤーズ・ライト・キングサイズを神経質に吸いつづけた。委員会で、鶴田先生が私を弁護したのは疑いない。が・・・。彼からは、何も言ってこない。思い余った私は、彼にこちらから電話した。彼の口調はあくまで冷静だった。「もう一度試験を受けようと思います」。私は言った。「そうか。ところで、君の答案を検討しようではないか」「分かりました」。私は、自転車に乗って、いま戻ってきたばかりの道を、学部棟まで走った。鶴田先生は、私の答案を取り出し、嫌らしいほど綿密に、私の論理の破綻と飛躍を指摘した。私は、うなだれるばかりだった。

 最後に、彼は言いだした。

 「君は、本当に学者になりたいのか?」

 あ、と私は思った。

 「小説を書いたらどうだ? 学者というのは、退屈な仕事だぞ」

 彼は、そこにあった本をぱらぱらとめくって、長い時間をかけてテクストとこつこつ格闘する学者稼業の退屈さを示した。

 「君に、それができるか?」

 私は、泣きたくなった。たしかに私は小説家になりたいと思ってはいた。だがその才能がなかったために、学者の道を選び、こうしてカナダまでやってきたのである。その道からさえ、私は蹴落とされようとしているのか?

 「君の論文を読んだ人はみんな言う。着想は素晴らしい。だが論証が出来ていない。その想像力を小説に使ったらどうだ。君を貶めようとしてこんなことを言うのではない。私も、同じことで苦しんだんだ。だが、私は生き延びなければならなかった」


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