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小谷野 コピペ

161名無しさん:2007/09/15(土) 01:35:27
2007-09-15 それでも匿名批判は卑怯である

 O君は、私の後輩である。といっても、年齢も学年もずいぶん下だから、たまたま私が非常勤で東大へ行っていて、休み時間に出身研究室にいて、口を利くようになった(今ではその研究室も禁煙になったから、用事がない時は行かない)。それから、何かの用事で電話で話したりするようになった。

 O君は、自分のウェブサイトを持っていて、読書感想文を書いていた。それはしばしば、感想文から逸脱して日記になっていた。その読書量には感心したが、時おり、つまらないと言いつつ全部読んでいるので、つまらないと思ったら早く放り出したほうがいいぞ、と言ったが、彼は、つまらなくても全部読まないと気が済まないそうだ。

 しかし私はそこに、現存の著者の新刊などに対する、時には罵詈雑言とも言うべき批判が連ねられているのが気になって、匿名でこういうことを書くのは卑怯ではないか、と言った。この時、やや険悪な雰囲気になったが、彼は、どうせ誰も見てませんよ、とか、これは私的な場です、とか、相手が、お前は誰だと訊いてきたら答える、とか言を左右にして、匿名批判を続けた。

 誰も見てないって、もし著者が検索したら出てくるだろう、と言ったのだが、彼は、いやあ、などと口を濁した。私的なもので、少数の友人が見てるだけですよ、とも言うのだが、それならそれで、友人にしか見られないようにすればいいだろう、とも言ったが、彼は聞かなかった。

 そのうち、彼は著書を上梓し、大学に職も得た。その著書に、アマゾンで酷評のレビューがついた。彼はひどく怒り、こうして匿名でやられてみると、やなもんですねー、などと言っていたが、自身の匿名批判はやめなかった。

 ある日、彼が「昔の人は歯が悪かった。タバコは吸ったし」と書いているのを見て私は電話を掛け、これじゃあ今の人はタバコを吸わないみたいじゃないか、と言い、直すように言った。その他は、四方山話に終った。ところが、翌日になって、全然直っていないのに気づいた。彼がなぜ直さなかったのかは、未だに謎である。私は自分のブログにリンクし、彼の名をあげて非難し、彼はサイトを閉鎖した。

 その後も私は彼に電話を何度か掛けたが、いつも留守だった。先日メールして、ちゃんと話をしたい、と言ったら、返事が来た。まるで絶縁状のような「非常に残念です」というものだった。私は「もう私と話したくないということですか」と返事をしたが、それへの返事はなかった。

 その少し前にも、学会で発表した人への悪罵が書いてあった。既に職も得た彼が、依然として匿名でそういうことを全世界に発信するのが、なぜ許されると思っているのか、私には謎である。仮に、もっといい大学へ移りたいとか、学会での立場がある、とかいうなら、やめればいいのだし、逆に、もっとマイルドな形の批判にもできたはずだ。

 残念なのは、私のほうである。

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 ある場合における匿名批判の意義は認める。自分が勤める企業の内部告発とか、自分の生殺与奪の権を握るような大物への批判とかである。しかし、糸圭秀実や渡部直己の、文藝雑誌における匿名批評の重視は、私にはよく分からない。なぜなら、匿名なら何でも書けるかといえば、編集部や編集長というものがいて、そこでストップされることもあるだろうからだ。

 (小谷野敦)


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