僕もあのザリガニというかエビには興味深々です。『立昇る曙光Aurora consurgens』の偽錬金術師が弾く弦楽器と化したエビとともに。面白い発見があるといいですね。
ご質問を拝見して、F.Saxl; Verzeichnis astrologischer und mythologischer, vol 2(1926)所収の「中世後期占星連作壁画、パドヴァのラジョーネ宮」の論述を思い出しました。
フェラーラのスキファノイア宮の壁画を論じたものではないのですが、挙げられている書名が同じだったもので...サクスルはイタリア語版でLa fede negli astri, Torino, Bolinghieri, 1985という便利な占星図像に関する論考をまとめたものがあります。
ただ、問題はまさに図像学が成立する所以というか、文献学だけではなんともならない羅訳されなかったかもしれないけれどもフェラーラに持ち込まれたアラビアの細密画写本、あるいはその手の図像便覧の存在という仮説の方向へ拡散するような気がします。
メセナとなったボルソ・デステの研究や、スキファノイア宮の壁画最上部、いわゆる凱旋連作については結構いろいろなことが書かれているようですが、デカノのほうはこれはデカノだ、みたいな論述しか見たことがありません。
ちなみにAtlanta di Schifanoia, Modena, Edizioni Panini, 1989というこの壁画修復記念で刊行された大冊がありますが、これもデカノに関しては残念ながら役に立ちません。
その後、新しい展開があったらご教示くださいね。
Astrolabium, Augusta 1488版はおそらく印行初版なのでしょうね。いや、その前にもあるかもしれないから初期刷本にしておきましょう。
これは1494年にヴェネチア版が出ているそうですが、そちらは挿絵入り?。いや、そう簡単にいくなら誰かすでに書いてるよね。
いや、そうなると壁画のほうが先か。たしか1470年代後半から遅くとも1480年代中ごろにはできていた壁画ですよね。
なるほど、ザクスルもヴァールブルグ一派ですから同じものを挙げているのも納得ですね。僕の手持ちの中では、Ornella Pompeo Faracovi, Scritti negli astri: l'astrologia nella cultura dell'Occidente, Venezia, Marsilio, 1996 が役立ちそうな一番新しめのものあのですが、その文献表でも図像関係ではヴァールブルグとザクスルの著作しか挙がっていません。その後のこれといった研究がないということでしょうか?
Astrolabiumの1494年のヴェネチア版は挿絵入りですね。でも、僕が持っているコピーは、あまりもとが良くないのか、ところどころ文字が潰れてしまっていてあまり良いものではありませんでした。
それとスキファノイア宮の「月暦の間」の製作年代は1469年から1470年にかけてのフレスコ画です。
あと、デカンについてはエルスベート・ヤッフェがTexte zur Analyse der Dekanfiguren(書いた年代はわかりません)というものを書いていて、その中で彼はスキファノイア宮のデカンとアブー・マアシャルのテクストを中心にして、ヘルマヌス・ダルマタ、ゲオルギウス・ゾルトス・ザルパス・フェンドゥルス、イブン・エズラ、ザ−ヘル、オーストリアのレオポルト、ポンピリウス・アルザス・プランケンティヌス、ルドヴィクス・デ・アングロ、『ピカトリクス』などの占星術関連のテクスト(ここに挙げたものに関してはあまりしらないので・・・)を挙げて表にしているのですが。やはり図像についての記述のみで話が進められており、Astrolabiumのような図像の類似というだけというようなものは外されていて、しかもスキファノイア宮のものとテクストのあまり類似していないと思われる箇所に関しても外されているというものです。
それで最初の質問で「イメージに関する記述もしくは図像のある占星術文献」というようなことを書いていた次第であります。(まあ、それでもヤッフェのテクストは役にたっているのですが・・・。)
そして彼のテクストにおいてもやはり、まだまだ足りない部分というものがあるので、なにかないものかと考えている段階です。