・回収期間法(Payback Period Method)
→ 基本的に回収期間が短い方が望ましいとされる。
ただし、Cash Flowの時間価値を無視しているため、適正な評価方法とは言い切れない。(でも、実務では良く使用される。)
※回収期間法について、テキストでは次のような解説が与えられている。
The payback period indicates how many years it takes to recover the original investment in the project.
※回収期間が短い方が高い評価が与えられる理由は、回収期間そのものがプロジェクトの投下資金回収のリスクであり、投下資金の流動性を意味するものであるため。
※回収期間(Payback Period)をPBPと略すことがある。
・割引回収期間法(Discounted Payback Period Method)
→ 回収期間法に時間価値を導入したもの
ただし、回収期間終了後のCash Flowを無視している点は何ら改善されていない。
※割引回収期間法について、テキストでは次のような解説が与えられている。
The discounted payback period indicates how many years it takes to recover the original investment stated in present value terms.
・内部収益率法(Internal Rate of Return Method)
NPV=0=−I+ΣCFt/(1+IRR)^t
※このIRRを手計算で算出することは困難である。現実には数学的試行錯誤法によって算出することが多いようである。
・正味現在価値法(Net Present Value Method)
NPV=−I+ΣCFt/(1+k)^t
※単独プロジェクトの場合
NPV>0 ・・・ 投資実行
NPV=0 ・・・ 投資実行
NPV<0 ・・・ 投資見送り
※個人的には、少なくとも機会コストとの比較や潜在的リスク評価等のフィルターを通してからでないと投資実行の是非を判断することはできないのではないか、と考える。
・Sunk costs
→ It is not a relevant incremental cash flow in analyzing a capital Budjeting Project.
※投資プロジェクトの評価を行う際、sunk costs はあくまで事前に費消されたコストであるから、当該コストをプロジェクト評価に組み込むことは妥当ではない。
※Oppotunity costs は、特定のプロジェクトを採用することによって、今回は採用を見送られた他のプロジェクトが生み出したであろう Cash Flow のこと。機会コストは、投資プロジェクト評価の際には、必ず組み込んでおくことが求められるコストである。
※その他、考慮すべき事項としては、Externalities や Cannibalizationといった投資プロジェクト実行に伴う既存部門の収益機会の損失(むしろ、食い合いによる収益低下というべきか・・・)がある。
・Sensitivity Analysis
→ In capital budgeting, a risk anaiysis technique in which key variables are changed one at a time and the resulting change in NPV and IRR are observed is called 'sensitivity analysis'.
・負債トレードオフ理論(The trade-off theory of leverage)
→ 負債の増大により、節税効果も比例して増大するものの、倒産リスクも増大する。
言い替えれば、節税効果による企業価値の増大と倒産リスクの増大による企業価値の減少の合計値が最大になるような資産構成が最適資産構成ということになる。
[雑感]ということは、負債(独立変数)の増加による企業価値(従属変数)の増減をグラフで表すとすると、原点から凸の2次関数になるのではないか。だとすれば、所詮は事後的な測定であろうが、当該関数の極大点を探れば良いということになるのか・・・
・テキストでは、The trade-off theory of leverage について、次のように解説している。
→ According to trade-off theory,companies would be expected to have a value-maximaizing debt level where the marginal benefits of a tax shield equal the marginal bankruptcy-related costs.
更に・・・
In a world with taxes and bunkrutcycosts, companies would be expected to have an optimal capital structure where the cost of capital is minimized and share price is maxmized.
・会社からの配当に対する株主の嗜好について
→ 会社の株主が一様でないことに着目すれば、株主の配当請求の多様化を無視して配当政策を一律に定めることは、少なくとも合理的な行動とは呼べないであろう。
・配当無関係説(The dividend irrelevance theory)
→ モジリアーニとミラーは、配当政策は株価に影響を与えないとした。
(理由)
① 配当が株主が当面必要とする金額を超えているのであれば、配当の一部で当該会社の株式を買い増せば良い。
② 上記①とは逆に配当が少なければ、株主は、所有する株式の一部を市場で売却して現金を得れば良い。
すなわち、会社が如何なる配当政策を取ろうとも、株価には影響を及ぼすことはないのである。
※この理論の根底にある考え方を homemade dividends という。
※テキストの説明は以下のとおり。
Dividends irrelevance theory states that dividend policy has no effect on either the company's value or its cost of capital.
[雑感]この考え方を素直に受け入れることはできない。少なくとも配当割引モデル(DDM)の考え方を否定しかねないからだ。
もっとも、この考え方は、会社経営政策上の多角化への有力な批判(→ そもそも株主は、自己の資産を複数の会社に分散投資を行い、自己が望むポートフォリオを構成することができるわけであるから、個々の株式公開会社が経営の多角化(=中核業務とは無関係な業種への進出)は無意味であるばかりか、当該会社の所有者である株主の利益を損なうおそれすらある。したがって、会社はコア・コンピタンスに経営資源を集中させるべきである。という考え方)に通じているところがあると思われる。
(この考え方そのものを受け入れることはできないが、)この意味で、この考え方の有効性は受け入れざるを得ないであろう、と思う。
・「掌中の鳥」説(The bird-in-the-hand theory)
→ ゴードンとリントナーは、株主の要求収益率(Ks)に着目して、次式のうち、右辺の第1項である配当利回りこそが重要であると説いた。
なぜなら、株主は、(予測が立ち難いという意味で)比較的不安定な利益成長率よりも、比較的安定している配当成長率を好むからである。
Ks=D1/P0+g
ただし、D1:来期の予想現金配当額、P0:現在(期初)の株価、g:サスティナブル成長率
※テキストの説明は以下のとおり。
Bird-in-the-hand theory states that a company will maximaize its value by setting a high dividend payout ratio.
[雑感]正直にいえば、株主を危険回避者であると前提を置いたために出てきた考え方のようにも思える。
もとより、このような考え方を否定するつもりはないが、配当にのみ着目するという考え方には・・・いささか奇異なイメージを持つ。
長期保有の場合なら、むしろ、成長率の方が重要になるようにも思えるのだが・・・
・節税選好説(The tax preferance theory)
→ 投資家が低い配当性向を好むのは、次のような税金面での問題があるためであるとする。
① キャピタルゲイン課税の方が配当課税よりも税率が低い。
② 株主の意思でキャピタルゲインを実現するまで(すなわち、株式を売却するまで)は課税されない。
したがって、配当せずに内部留保された金額は、会社の内部金融として処理され、株主からすれば、会社が一定の成長を維持しているのであれば、事実上、課税時期の繰り延べという利益を享受することができる。
③ 株式を保有したまま株主個人が死亡した場合、相続時には非課税で課税ベーシス(相続税法上の簿価)を引き上げる効果を持ち、課税対象額を引き下げる効果を得ることができる。
※テキストの説明は以下のとおり。
The tax preference theory states that investors prefer stocks that pay low dividends to stocks that pay high dividends.
[雑感]もとより、これら①〜③の株主の利益は米国におけるものであり、わが国の税法に単純に当てはめることはできない。
・配当シグナル効果説(The information content or signaling hypothesis)
→ 増配を公表した会社の株価は比較的上昇し易い。
これは、投資家が当該会社の「配当政策」が変化したとは考えないで、「期待収益」が変化したと考える。すなわち、収益性の向上を期待しているのである。
情報の非対称性の問題から、会社のことを一番分かっているはずの経営者が増配を公表した以上、会社が市場に対して将来の収益について楽観的な見通しを持っているというシグナルを送っているとみなされるわけである。
・顧客効果(Clientele effect)
→ 前述したモジリアーニ=ミラーの考え方をやや敷衍したものと言えようか。
① 累進課税制度を前提とする社会では、高い税率を課されている富裕層の個人投資家の場合、相対的に税金の高い配当による分配よりも、相対的に税率の低いキャピタルゲインによる収益実現を好む。
② 一般事業法人の場合、受取配当金に関しては、益金不参入の制度があるため、現金配当での収益実現を志向するので、高い配当性向を好む。
③ 年金基金の場合、そもそも配当課税が行われない(非課税)なのであるから、上記②と同様の投資行動をとる。
すなわち、株主となる投資家層の選好が異なるのである。
このことは、投資家は、自分の選好と合致する会社をあらかじめ選択して投資していることになる。
だとすれば、個々の会社は配当性向を変化させても株価を変化させることはできないはずである。なぜならば、当該企業の変化した後の配当性向を好まない投資家から、好む投資家へと株主層が変化するだけだからである。
よって、個々の会社での配当政策は、株価に影響を与えることはない。
・残余配当モデル(The residual dividend model)
→ 省略。
・自己株買い
→ 日本でも会社による自己株式の購入が認められた(しかも金庫株まで)が、この自己株式を購入することによって、株価が変化することがある。
そもそも、自己株式の購入は、一定範囲で認められた自己資本を元手に市場から自己株式を購入するわけであるから、資本構成として、現金(=資産)を自己株式(=資本)に置き換えただけであり、少なくとも企業価値の変化をもたらすようなものではないはずである。
では、何故、自社株買いに株価は反応するのか。その理由として考えられているものとしては、次のようなものが挙げられる。
① 情報の非対称性から、経営者による市場へのポジティブなシグナルであると受け止められるから(シグナル効果)
② 自社株買いに応じるのか否かの選択権は、あくまで株主が保持するから
③ 浮動株を減少させることができるので、株価の下支え効果が期待できるから
④ 資本構成を大きく変化させることができるから
もっとも、これに対しては次のような問題点も指摘されている。
① 株主は、収益実現の方法(配当か、売却益か)について無関心ではないので、かならずしも自己株買いを歓迎するとは限らない。
② 会社が市場での株価を大きく超えて自己株買いを行った場合、これに応じた株主と応じなかった株主の間で不平等が生じる結果となる。