あれから約2年半後の現在、Sunの現状を見るに残念ながらこの某アナリストの観測は正しかったと言わざるをえない。連続10四半期にわたり同社の収益は継続的に低下しており、先の9月に終了した四半期ではキャッシュフローすらマイナスになってしまったからである。Sunの業績低迷の理由としては、ドットコムブームが去り、世界的にIT投資が控えられる傾向にあるという点はある。しかし、最大の理由は、Digital(DEC)の凋落の理由と同じ、つまり、SPARC/Solarisというプラットフォームにほれ込みすぎ、ほかの選択肢に目が向かなくなってしまったことであろう(DECもVAX/VMSというプラットフォームが優秀でありすぎたために、RISCとUNIXへの転換が遅れてしまったといえる)。英語の言い回しでは、「victim of its own success」(自らの成功の犠牲)という状態である。
ところで、ITの世界で「自らの成功の犠牲」となることを最も巧みに避けてきたベンダーのひとつはMicrosoftではないだろうか? かつてのコラム(第4回 マイクロソフトの.NET戦略は何故わかりにくいのか?)においても述べたが、従来型のパソコン通信の世界から大きく舵取りを変え、インターネットの世界でも重要プレーヤーとなることに成功した同社の変革のスピードの速さは驚嘆に値する。Microsoftの強みは、リスクをいとわず先行投資すること(実際、Microsoftの長期的イニシアチブの多くが失敗している)、競合の脅威に対して過剰なほど反応する「超心配性」企業であること、いったん、戦略転換を決定した場合には過去を否定することをいとわないこと、そして、「embrace and extend」、つまり、「(競合を)積極的に採用し、(自社に都合の良いように)拡張する」という戦略にある。Sunにとっては耳が痛い話かもしれないが、今、同社に求められているのは、このMicrosoftのような貪欲な姿勢であると言えるだろう。