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16帝王学の基本は闘争本能:2004/01/02(金) 17:09
■科学に楽しさを:2003年『イグ・ノーベル賞』授賞式

 オーストラリア人のジョン・カルベナー氏は、羊の毛を刈ることにかけては非常にまじめに考えている。牧場で育ち、毛を刈るために羊を移動させるときに羊飼いたちがケガをするのを見てきたからだ。しかしカルベナー氏が10月2日(米国時間)夜、由緒正しいハーバード大学のサンダーズ・シアターで発表した、羊の毛を刈る際の安全性に関する研究は、会場に集まった1200人の騒々しい大学生たちの爆笑を呼んだ。今回発表された『さまざまな床面において羊を引っ張るのに必要とされる力の分析』という題の論文は、昨年11月、カルベナー氏が同僚たちとともに『アプライド・エルゴノミクス』誌に掲載したものだ。

 しかし、カルベナー氏は聴衆の反応を不快に思うことはなかった。なぜなら、どれだけ笑われようと、今年も開催されたこの第13回『イグ・ノーベル賞』授賞式では、物理学賞のトロフィーを授与されるからだ。イグ・ノーベル賞は、あのノーベル賞をパロディーにした人騒がせな賞だ。今年のトロフィーは、透明なプラスチックの箱に入った長さ1ナノメートル[10億分の1メートル]の金の延べ棒だった。本物のノーベル賞を受賞した科学者のウォルフガング・ケーテル氏やリチャード・ロバーツ氏たちも今年の授賞式のプレゼンターとして登場(写真)、授賞式の中では恒例の紙飛行機が飛び交い、美貌の科学者と酸素原子との恋物語を描いた「ナノ・オペラ」の『アトムとイブ』も披露された。今年のテーマ「ナノ」に合わせて受賞後のスピーチは24秒に制限され、続いて発表の要旨を明解に7語にまとめるよう求められる。ステージに呼ばれたカルベナー氏は、お礼の言葉をろくに言う暇もなく、側に立って「長すぎるわ。もうやめて。退屈よ」と繰り返す少女に遮られ、席に連れ戻されてしまった。アカデミー賞授賞式のプロデューサーも、この式次第を見習いたいと思っているかもしれない。

 ユーモア科学雑誌の『奇想天外な研究年次レポート』(Annals of Improbable Research、AIRという言い得て妙な略称でも知られている)が主催するイグ・ノーベル賞は、毎年、どういうわけか科学の主流から注目を浴びそこなってしまった研究に対して与えられる。受賞者たちによるとイグ・ノーベル賞の趣旨は、ただ面白がるだけでなく、科学に楽しさを取り戻すところにあるという。「もし自分を笑い飛ばすことができて、自分の仕事を楽しめるなら、もっとクリエイティブに思考でき、さらに成果があがるだろう。深刻な問題に取り組んでいるときでも、楽しめないわけはない」とカルベナー氏は話している。


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