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◆「あるべき未来」から今を考える
観光協会の責任者という立場だったが、吉田氏は、観光は地域振興の一部と位置づけた。農家民泊や田舎型交流ビジネスを立ち上げたり、田舎の「困りごと」を都市部住民がレジャー感覚で過疎地住民と共に解消する「雪かき体験ツアー」「三段峡流木清掃体験ツアー」など、幾多の商品を開発した。
それらの目的は、住民に「これまで、できれば隠しておきたかった恥ずべきこと」とされていた困りごとが、都市部住民にとっては新鮮な「レジャー」に映るという現実を目の当たりにしてもらい、実は過疎地域は「宝の山」であったと理解してもらうことで、住民の熱量を上げることだった。「まだ何も諦める必要は無いのだ」と。
主役は常に住民であり、観光協会は黒子にすぎない。交流人口や移住者を増やすには、一見、遠回りでも住民自身が動き出す必要がある。
着任した吉田氏が、まず力を入れたのは、住民への説明会や座談会を開催することだった。町内会や学校、企業の行事など、ありとあらゆる機会を利用し、住民との対話は年間100回近くに及んだ。
そうした取り組みで吉田氏が目指したのは、住民の参加を促して地域の未来像を共有することだ。
「直近の未来ではなく、もう少し先、10年、20年先の未来を想像してもらい、気づきを促しました。『バックキャスト』という方法です」
バックキャストとは、今の現実から起こりうる未来を予測した後、「あるべき未来像」を共有し、その未来を実現するには何が必要かを、もう一度、現在に立ち返って考える方法だ。
吉田氏は、住民が「登るべき山」を共有することの大切さを説く。登る山を見つける段階では「よそ者」が力を発揮するが、実際に山を登る主役は、あくまで住民。地域の未来をつくり出すには、住民たちの意識改革が不可欠になる。
「昨今では、山をどう登るか、登り方ばかりを語る有識者が地方創生の旗を振っています。つまり、どうやって地方を活性化するかという手段ばかりが注目され、手段が目的化している。大切なのは、登る山をどう見定め、その山に登る『意味と意義』を、住民や行政でどう共有していくかです」
◆自ら動き始めた住民たち
「意味や意義」を共有し、意識を変えるのは時間がかかり、奇策はない。吉田氏は変化のきっかけを用意して小さな実践を繰り返し、住民自らが動き出す土壌を育んでいった。
吉田氏が事務局長を務めていた当時、8人の観光協会職員のうち7人がU・Iターン組。新たな「よそ者」の協力を得て、地域の日常の暮らしに光を当てていった。
安芸太田町は、日本最南端の豪雪地帯である。雪かきは地域の困りごとであり、「雪かき体験ツアー」も当初、住民は「お金を払ってまで来る人はいない」と考えていた。しかし、その企画は募集定員が満員になるほど好評を博し、町内各地で困りごとを活用した多くのプログラムがつくられ、毎年参加する大学生は200人近くまで増加した。
地元の伝統芸能である神楽も、住民が見過ごしていた地域の魅力の一つだ。外国人目線を採り入れるため、岩国基地に駐留する米国人に安芸太田町の魅力をヒアリングし、神楽の練習風景に着目。欧米の富裕層をターゲットに、体験ツアーを企画した。
さらに、観光の企画だけでなく、商品開発も支援した。地元の特産品として、祇園坊柿がある。安芸太田町では、吉田氏が着任する以前から、祇園坊柿のスイーツ「チョコちゃん」が細々とつくられていた。
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