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法華経について
304
:
一字三礼
:2008/06/18(水) 23:14:23
犀角独歩さん
考古学的な資料を基にして、原法華経の製作年代、製作地等を探る作業は、『法華経』の成立史を考察した諸師、例えばケルン、宇井伯寿、和辻哲郎、布施浩岳、中村元等がそれぞれに独自の見解を示しております。
しかし、どの説も、誰もが納得できるだけの説得力を持ってはおりません。
その理由は、諸師の提示する考古学的な資料や歴史的な出来事と、『法華経』との関連性が明確に証明できず、漠然としているからではないか、と考えます。
例えとして中村元説を要約して考えてみます。
中村師は、原法華経の製作年代の上限を紀元37年以後と設定しました。
その理由として、「譬喩品」の長者窮子喩に現われる長者が、‘利息を取る商売をしている大富豪であり、国王やバラモンを駆使せしめるほどの財力を持っていた’ことを挙げています。そして、その状況に合致する時代として、インドで貨幣経済が急速に発達したウェーマ・カドフィセーズの時代と考えました。
しかし、この理由だけでは何も証明されません。
インドではヴェーダ時代から貨幣の使用が盛んに行われていた、とする説があり、この説には相当の根拠があります。また、紀元前6世紀頃、つまりマガダ王国が栄えたころの打印貨幣と、インダス文明の度量衡単位とのあいだに密接な関係があったことも明らかにされております。
原始仏典の中にも「たとえシュードラであっても、財宝・米穀・金銀に富んでいるならば、クシャトリヤでもバラモンでもヴァイシヤでも、彼より先に起き、後に寝て、進んで彼の用事をつとめ、彼の気に入ることを行ない、彼に対して好ましい言葉をかけるであろう。」と述べられています。
ここから考えれば、インドの貨幣経済は、ヴェーダ時代にはすでに始まっており、釈尊の時代には盛んになっていて、どのような身分の者であれ大富豪であれば、バラモンやクシャトリヤを使役できた、ということがわかります。
そうしますと、「譬喩品」に登場する大富豪像から、その時代を確定することなど不可能ではないかと考えます。
また、「譬喩品」の長者窮子喩から製作年代の上限を確定できるのであれば、長者窮子喩が『法華経』の最古層であることを証明しなければなりません。しかし、中村師はそこに言及していません。
私は、極めて少ないインドの考古学的資料・歴史的資料から、『法華経』の製作年代等を探るのは不可能だと思います。
結局は、『法華経』に深く入って探りだすしかないのではないか、と考えます。
例えば、『法華経』の最古層で使われている仏教用語が、どの部派の用語・用法と関連があるか、などを丹念に調べることは、原法華経の製作地と製作集団にせまることが可能な作業ではないか、と考えます。
現在進行している作業がありますので、「原法華経について」は、公開の掲示板で述べることは差し障りがあるそうです。申し訳ありませんが、この話はここまでとさせてください。
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