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死刑制度についてひと言お願いします

1794Ken:2008/06/20(金) 15:03:28
それで行きずりさんのご要望にお答えして元の論文に当たってみたんですけどね。

DETERRENCE VERSUS BRUTALIZATION: CAPITAL PUNISHMENT'S DIFFERING IMPACTS AMONG STATES
Joanna M Shepherd. Michigan Law Review. Ann Arbor: Nov 2005. Vol. 104, Iss. 2
pg. 203, 53 pgs

50ページ以上という超大作ですよ。しかもたった一人で。この分野では当たり前かも
知れないですけど。内容は...私の手には負えません;-(
結論は直感的ですが、それにいたる手法がちんぷんかんぷん。なにやら回帰モデル、
数式を立ててこれに様々な統計値を代入して死刑の抑止力を定量化する、といった
感じです。それじゃ仕方がないんで彼女が自分の研究を素人向けに解説した記事を
クリスチャンサイエンスモニター紙に見つけたのでそれとあわせてすこしだけ
解説してみたいと思います。
http://www.csmonitor.com/2005/1214/p09s01-coop.html

まずこのエモリー大学法学部ジョアン・シェパード助教授は美人で(関係ないけど)
http://www.law.emory.edu/home/news-article/article/the-christian-science-monitor-features-prof-shepherds-death-penalty-op-ed.html?tx_ttnews%5BbackPid%5D=1218&cHash=90c130b754
まだ若いのにCSモニター、ウォールストリートジャーナルに寄稿したり、NYタイムズの
社説で研究が紹介されたりと、新進気鋭の学者のようです。それで彼女が扱ったのが
1977年から1996年にいたる全米全州全郡の統計データですね。このサンプル期間で
死刑が一度でも執行されたのは約半数の27州に上るのですが、死刑に抑止力が
認められたのはさらにその約5分の1、たったの6州(テキサス、ネバダ、南カロライナなど)。
死刑の執行された州のうち約5割、13州(ユタ、オレゴン、オクラホマなど)では
なんと逆に死刑の結果殺人率が上がるという結果が出ました。残りの8州は死刑で
殺人は増えも減りもしないという結果です。

それで、先生の立てた仮説というのはこうです。死刑には抑止力と残虐化(brutalization)
という拮抗する二つの作用があるのではなかろうかと。残虐化というのは死刑によって
社会に残虐で暴力的な空気が蔓延する、という意味だそうです。それで、州によって
処刑によってこの二つの作用の按配が変わって、相対的に抑止力が強い場合には
殺人が減り、逆に残虐化が強い場合には死刑によって殺人が増えると。正味で
釣り合っているときにはなんら効果なし。

それで、なぜ州によって二つの作用のバランスが異なるのか、先生が注目したのは
処刑の絶対数ですね。抑止力が認められた州は処刑数が多い。逆に残虐化が認められた
州は処刑数が少ない。死刑が抑止力として機能するためにはそれが犯罪予備軍にとって
精神的圧迫とならなければならないわけですよ。どかどかと処刑されていくテキサス州には
そういう圧力がある。ところが死刑の数が少ないと、たとえばカリフォルニア州は
死刑判決を出すばっかりで処刑が滞っているため2005年の時点で650人もの死刑囚が
いるのに対して1977年以来たったの12人しか処刑されていない。こういうところでは
死刑が抑止力を発揮することはなく、逆にネガティブな残虐化によって殺人を
誘発してしまうと。そういう解釈をしています。

全米で平均してしまうと圧倒的処刑数を誇るテキサス州が他州を凌駕してしまい
死刑には抑止力あり、という結論が導かれるそうです。


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