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「フィボナッチ数列の殿堂」への夢

13藤原肇:2009/01/26(月) 02:33:32
朝食を済ませた三日の午前中の散歩は尾根伝いに枯葉を踏み、野生のポンカンやキンカンを食べながら歩いた後で、版画に影響された印象派の絵描きや尾形光琳が好みそうな、直角に折れ曲がった梅の枝が並ぶ林を横切って茶畑を過ぎると、丘の中腹に二階建てのレンガの建物が聳え立っていた。これまで恵林農場には十回ちかく訪れているが、数十万坪か数百万坪かの広さを持つ山や谷を含むこの農場には、京都の鞍馬から大原に続く地帯の景観が広がって、この朝の散歩で歩いたのは初めて訪れた場所であり、丘の上に突然に現れた赤レンガの建物に目を見張った。
中に入ると吹き抜けになった広大な空間が広がっていて中央にビリヤードの台が鎮座し、二階に上ると中央の大きな部屋に私を導いた謝さんが、「藤原さんが送る本はこの部屋だけで十分だろうか」と言ったので呆然としてしまった。かつて謝さんが「図書館を作ってあげるから本を持っていらっしゃい」と言ったので、木造のバラックでも建てるつもりだろうと思っていたのに、レンガ立ての建物が出来ていたとは夢にも思わなかった。
このときまでここがその図書館になるとは考えなかったし、「幾ら待っても藤原さんが腰を上げてくれないから、二年以上も空けたままでもったいなかったので、前庭ではお茶を日干して乾かすのに使っていたけど、ここでゼミでもやったらキット成果が生まれるし、いろんな人が育って面白い結果が生まれるはずです」と謝さんは笑って言ったのである。しかも、建物の二階の東端の部屋には檜か黒檀で作った天蓋つきのベッドまでが置いてあり、「本を読んで疲れたらここで休養したらいい」と言われて、予想もしていなかっただけに夢を見ているような気分になった。しかも、話の様子ではここが謝さんが用意した「慧智研究センター」で、その中に図書館が併設されるらしいということが分かり、この驚きは陰から陽への転換で闇に光が差し込んだ瞬間に似て、逆序の理をそのまま図面にした幾何学的な情景であった。フィボナッチ数列の第四項の1,1,2,3はまさにビンゴになって、その日の夜にミーティングがあるといって、謝さんは五日に戻ってくると台北に帰っていったが、私にとって一月三日は驚きに満ちて感激のうちに暮れたのである。


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