古希の歳を迎えたのが一つのチャンスとなり、十二月の初めに一通の招待状が届き、それにいざなわれて新年の挨拶を皆さんに送り、偵察を兼ねて仙境で新しい年を迎える旅に出ていましたが、元気はつらつとして砂漠に戻って来ました。
私的なことの公開は恥ずかしいとは思うものの、喜びを分かち合ってもらいたいと思うし、今回の旅路の報告にしたいと考えたので、とりあえずは招待状の最初の部分を紹介して見ましょう。
「Dear Dr. Hajime Fujiwara, I was deeply impressed with your Holocosmics: Beyond the new horizon of an unified theory in the Meta-Sciences which forum was held in 1994. And I am very pleased to invite you back to Taiwan again to prove into further research in relation between the mother earth and the human lives.」で始まる十二月一日付けの手紙は、『賢者のネジ』の対談の冒頭に出てくる台湾・日本研究学会の名誉会長で、国際美育自然生態基金会の謝森展会長からのものです。
年末で座席の確保が難しかったが期待に満ちた気分に包まれ、私は台北行きの直行便で太平洋をひと飛びしました。そして、大晦日の夜を北投温泉で過ごして時差ボケを治し、元旦から暫くは静謐な謝さんが作った「恵森自然休間農場」で過ごして来ました。ということでこの物語は始まります。
一月一日の翌日は二日だから1,1,2となり、これはフィボナッチ数列の始まりと一致しているし、何となく黄金分割に縁のあるスタートだと感じたので、朝食後に謝さんに「慧智研究センター」の名前を示し、英語なら「Research Institute of Cosmic Wisdom」が良いと提案したら、彼は大賛成でそれにしようということになった。また、謝さんは国際美育自然生態基金会の理事長であり、環境問題に関しては台湾における最高責任者であるし、自分が経営する恵森農場には広大な有機農場を持ち、周辺の山には檜を植林して育てていることから、環境問題と宇宙原理についての研究施設として、そのセンターとして発展させたいと希望していた。
そこで、宇宙を支配している最も偉大な大法則はフィボナッチ数列だから、センターの研究課題の一つにしたらどうかと提案した。そして、渦巻きには右回りと左回りの違いの秘密があり、螺旋運動に生命力を支配するカギが潜んでいて、その問題がこれから挑むべき重要テーマだと示唆したところ、それは素晴らしいアイディアだから、具体的にどう展開するか考えようということになった。
有機野菜の昼食の後で「霊芝培養研究所」に行って様子を見たが、若い研究者や作業員が正月だのに熱心に働いていたから、正月休みをしないのか統括にも聞いたら笑われてしまい、台湾では月齢で旧正月を祝うのが自然の摂理だといわれて、農業を始め自然の成長と結びついた世界は月の支配下にあり、それを放棄したことで日本の農業が狂った顛末を改めて痛感した。なを、霊芝に関して「LA International」の2002年.九月号に掲載した記事は、『宇宙巡礼』の「記事」の欄に『不老長寿の仙薬「霊芝」』と題して収録されたお陰で、雑誌が廃刊になった後も多くの人に読まれて喜ばれている。
恵林農場の木立の中には彫刻が散在していて、大阪の万博に出品したユーゴのCherinaの青銅の作品が、裸婦や母子像を中心に置いてあるだけでなく、石造りの狛犬やサトウキビ用の石臼が大量に並んでいる。しかも、アリゾナには『Fossil Tree National Park』があって、入場料を払って化石化した地質時代の木の幹を観察するが、ここでは珪化木の椅子に座って議論でき、瞑想も可能だから地質屋の私には天国であり、高い大地のエネルギーを浴びるのは至極当然だ。
また、至極という文字は天文学のトポスと関係していて、夏至や冬至の至ると難局や北極を示すから、至極という言葉は素晴らしい意味を持つと気づいた。後になって、牧夫然とした感じで植生や農業について語り、昼食の有機野菜の味の良さを褒めて微笑んでいた、英語を喋った客人が前農林大臣だと聞いて、地位や肩書きのない田園生活の面白さを感じた。日本の農林大臣の場合は汚職で自殺したり、事務所費を誤魔化して顔に絆創膏を張るていたらくだが、この有機野菜の味を楽しむ人とでは好対照ではないか。
>25,26
「ゲーデル,エッシャー,バッハ」(以下GEB)を近くの図書館から昨日借りてきました。やはり難解かつ大書ですね。でも絵や図が入っていてホッとしました。野崎昭弘をはじめ翻訳者の方々のご苦労が伝わってきます。
副題の『 an Eternal Golden Braid 』一つとっても「永遠の金の組み紐」「不思議な環状パターン」「もつれた階層」等々の候補があり、最終的に「不思議の輪」におさまったことが分かりました。私的には「黄金」の文字が入って欲しかったとも思いましたが・・・
そのGEBから若干引用します。
張さんは七年ほど前から行方不明の状態が続いており、色々と手配して探したのだが探し当てることが出来ず、音信不通の状態がこれまでずっと続いてきた。
読者に見せるために借りたChart of Essence of Fujiwara Axiomを台湾に持参し、返却しようとしたら「頭の中にあるのであげます」と言って渡してくれた。同じように玉井さんにも持ち合わせたチャートを全部渡したが、あれは彼にしたら形見分けだったのだろうか。
張良も晩年は山の中に姿を消して行方不明になり、羽化登仙で黄色い石と着物が道端にあっただけで、遺体や姿は消えていたと司馬遷は『史記』の中に書いている。私の手元には黄色の石や衣類ではなくて、隠士・天才倍育理論者、張錦春、仙人の雲遊四海と書いた、緑色の名刺とチャートが残っているだけである。
本来ならば張さんも恵森農場に住んでいただろうに、今では彼の姿は地上では見かけないとしたら、何とさびしいことだろうという感慨に包まれた。それにしても誰かが後継者として彼が残したMacocaMの思想を発展することで、不思議な回文の世界を継承と発展をして欲しいと思う。張さんとは実に不思議なめぐり合いであった。
研修のインスピレーションゲームに使う名前遊びということで、千々松さんが私の名前に関して想像力を発揮して、色んな興味深い展開をしてもらえて楽しく読みました。千々松さんは名前を文字の面から捉えて、その意味論を展開しているわけですが、同じように音の面から捉えても面白い結果が生まれ、それを言霊という形の神秘主義に結び付けないで、言語の持つ系統発生的な遺伝子みたいな形で考えたら、面白いと考えたことがありました。
なぜならば、文字の発生は官僚制度と結びついていて、記録をつけるために発達したと言われており、それ以前は言葉による伝達と記憶が主役で、ナレーションが文学や歴史の表現として活用されたというのが定説です。だから、『古事記』の太安万侶は暗記した語り部に属し、『平家物語』や『太平記』は琵琶法師が物語り、『イリアース』や『オデュッセア』のホメーロスも盲目の吟遊の語り師で、出雲大社の千家も口伝で物語るそうです。
ところで、長い海外生活を通じて感じたことは、名前の持つ音にはリゾーム的なものがあり、私の肇という名前をローマ字て書いてみると、HAJIMEにな真ん中にJIMがあるので、米国では私の俗名はジムということになるし、アラブ世界ではメッカ巡礼をし終えた人としてハッジと言い、スペイン語にはハイメという名前があるし、中東ではハイムとして呼ばれてきた経験があり、はじめは一として始まりの意味があるわけです。
だから、ファイを導関数で現すと総てが1で構成され、そのことはメタサイエンスの論文の二ページ目に書いておきました。
Holocosmics: Beyond the new horizon of a unified theory in the Meta-Sciences
一月八日に謝さんが台北から農場に戻ってきたが、「藤原さんかここに住んで楽しんでくれることで、私にとっては今後がとても楽しいし嬉しい」いって、正式な形で私に次のような確認の手紙を作ってくれた。
LETTER OF PROPOSAL
January 8th 2009.
Dear Dr. Hajime Fujiwara︰
The executive board of the ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ Foundation is proud to nominate you as the Director General for the newly founded Research Institute of Cosmic Wisdom (RICW) [慧智研究中心] in Beipu‚ Taiwan‚ starting on April 15, 2009.
Your esteemed present knowledge and past research in the relationship between life and cosmic wisdom are high hopes that inspire our future study and activity. Moreover your concept for solving the current global warming problem is the most advanced in the world at the present time and your contribution could be very great. It is possible to say that it will be beyond our imagination.
Please accept our sincere offer. We will be very proud to invite you to our new institution to do further research in the relationship between nature and human lives with harmony and wisdom.
We deeply appreciate your consideration of our ideal. We hope your contribution and leadership will be great assets for not only our organization but also for human civilization. Sincerely,
こんな光栄なことはないので感激した私は文書をしたため、米国を引き揚げ四月からここに移り住むことを約束し、実り多い台湾訪問の旅行のクライマックスを迎えたが、ここに一月の体験として1,1,2,3,5,8,という実に不思議な序列に従った、フィボナッチ数列に支えられた地上巡礼が一段落したのである。
(注記::「英語版Japan's Zombie Politicsの出版について」の81),82)で慎重であれとのアドバイスがあったので、それを有難く受け入れることにして、正式な名称の代わりに◎◎◎Foundationという形の記述にした。)