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教養(リベラルアーツ)と場創り(共創)に向けて
13
:
尾崎清之輔
:2007/11/18(日) 00:50:28
【いつわりを受け入れることは自殺行為に等しい】
これは、過日、ダニエル・バレンボイム率いるベルリン国立歌劇場の来日公演のひとつ『トリスタンとイゾルデ』を観劇した際、公演プログラムに記載されていた『トリスタンとイゾルデ』の演出家ハリー・クプファーのインタビュー記事のタイトルです。
他のスレッドでも若干言及させて頂きましたように、今年10月に行われたベルリン国立歌劇場の来日公演へは、この作品と『ドン・ジョバンニ』の2作品を観劇しましたが、現在のワーグナー作品の名演奏家のひとりであるバレンボイムは、モーツァルトの『ドン・ジョバンニ』よりか、こちらの方が相当レベルの高さを窺わせる演奏と劇であると思いました。
数年前のシカゴ響との来日公演では「これが??」と思わせる程度の上演内容であっただけに、このたびの『トリスタンとイゾルデ』の方は期待以上であったと申し上げておきます。
さて、ハリー・クプファーは、現代におけるワーグナー作品の代表的な解釈者とのことですが、冒頭のタイトルにも少し表されているように、この『トリスタンとイゾルデ』という作品を、単なる情念の世界としてではなく、社会一般へ通用するような冷静なる解釈をもって、その演出に反映させていると感じたことは、私が嘗てDVD等で観た他の方々の『トリスタンとイゾルデ』と比べてみても明白と思われましたが、それを裏付けるが如く、彼へのインタビュー(引用者抜粋)では以下のように語っておりました。
◆『トリスタンとイゾルデ』の登場人物たちは世間的なしがらみの中を名誉やしきたりといった硬直した規範に縛られて生きています。そこでは、トリスタンとイゾルデの愛は決して許されない。しかし、それよりもむしろ問題なのは、彼らがそうした社会的規範に反発する姿勢を一度として見せないことなのです。それどころか、彼らは社会の硬直した規範を受け入れ、自分を犠牲にしてしまう。
(中略)
◆彼らは社会と対立してでも自分たちの愛を貫こうとはしない。反対に、自分をいつわってすべての真実を心の奥底にしまい込み、ただ観念の中で夜を昼に、昼を夜に逆転させようとするのです。本当は社会の中に矛盾があるのに、矛盾のすべてを自分の内面に移し変えてしまったため、倒錯した観念の世界に生きるより他なかったのです。
◆自分の中の真実を押し殺し、現実との対決の中に解決を見出すことをはなから諦め、それゆえ共に死ぬことすらできなかった二人の招いた結果なのです。それは彼らの生き方の結果に他なりません。
◆イゾルデが最後に歌う「愛の死」は、愛するがゆえに死すという美しい愛の歌などではありえないのです。そもそも「愛の死」というタイトルはスコアには書かれていません。それは作品が成立した時代が付与した、美化されたレッテルに過ぎないのです。イゾルデの「愛の死」は、むしろ深い悲しみの歌です。特定の社会的条件、たとえば慣習であったり、ドグマであったり、いつわりであったり、そういった条件に服する限り、道ならぬ愛は成就しないということ、そして、今となってはもはや何もかも手遅れだということ、その途方もなく深い悲しみを、イゾルデは最後の輝きの中で死へと導かれながら歌うのです。
実際の作品を見終わった直後に、このインタビューを読んだこともあって、余計この演出家の語った言葉の重みを感じさせられてしまいました。
そしてインタビューは以下をもって締めくくりの言葉となっておりますが、これこそが彼の現代社会への問題提起に繋がっており、オペラという物理的に閉ざされた劇場という「場」での観劇を通して、個々の観客が自らの現実社会を捉え直す切っ掛けづくりを与えていると思わざるを得ませんでした。
◆社会も現実も変化しています。だからといって、決して社会や現実の矛盾がなくなるわけではありません。
(中略)
◆作品の何が時代との接点を持つか、何が観る者の琴線に触れるかは、時代や社会によって変化するのです。だから、私たちは作品に対して常に新たな姿勢で向き合う必要があります。また、優れた作品は、繰り返し、その時々の現実と新しい関係を切り結んでいくものです。だからこそ、作品はたえず読み直され、新たな解釈が試みられなければならないのだと思っています。
(以下、次項へ続く)
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