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【news+】ニュース速報スレ【全般】★7
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しまね食の挑戦:/1 仁多米 安全安心支える探求心 /島根
◇「おいしい」の声、生きがいに
中国山地の山々に囲まれた奥出雲町。収穫期の秋には、たわわに実った稲穂で黄金色一色に染まった棚田が広がる。米本来の粘りと甘みがあると評価の高い「仁多米」の生産地だ。昼夜の気温差がある気候や真砂土の土壌をいかして、張りが良い品質の高い米が作られる。
「子供や孫が安心して食べられるものを」と米作りに励む渡部悦義さん(62)=同町上阿井=は、試行錯誤を繰り返しながら「自然に任せて、化学肥料や農薬を使わない」米作りに行き着いた。消費者に直接、米を販売。渡部さんはこの交流を大切にし、消費者の「おいしい」という声を生きがいにしている。
収穫を終えた昨年12月。渡部さんに無農薬米を育てる田んぼに案内してもらった。自宅の裏山に向かって坂道を上る。田んぼは自宅や他の民家が建つ所より高い場所にある。
引かれる水はどこから来るのか。たどってみると、裏山からわき出る清水に行き着いた。付近にはわさびが群生している。わさびはきれいな水でないと育たない。「ここは生活排水も全く入って来ない。水にもこだわらないとね」と胸を張る。
農家の長男として生まれ、幼いころから親の手伝いをしていた。そして、当たり前のように農業を継いだ。当時は、行政や農協の「窒素、カリウムなど種まきから収穫まで農薬漬けの指導」だった。生産重視。農家も農薬漬けの米に、疑問を抱かなかった。
約20年前に鳥取県倉吉市で開催された、農業と環境問題などをテーマにした講演会に参加した。農薬汚染の実態を知り、安全な米作りに取り組み始めた。地域ではさきがけ的な存在だった。
旧仁多町議を務めながら、専門誌を読んだり、先駆者から話を聞いたりして情報を集め、独学で研究した。評判となっていたアイガモ農法ではアイガモをキツネに捕られる、高い資材を買わされだまされる−−失敗が続いた。「変わったことをして笑われたり、収穫のなかった年もあった」。渡部さんは、当時を振り返りはにかむ。
昔ながらの自然農法に取り組む人に出会い「地域にあるものを使うのが一番」とアドバイスをもらった。「価格の高い資材を買わなくても、自分に合った農業をしよう」。現在は約4ヘクタールの田で、カニ殻や活性炭などの有機肥料、農薬の代わりに木酢液など、自然界の安全なものだけを使って栽培している。
無農薬米栽培では除草剤を使わないため、シルバー人材センターの女性に草抜きを頼む。田植えの約20日後から8月中旬までの間、延べ60人で約50万〜60万円かかる。費用はかさむが「人力に勝るものはないよ」。減農薬米は一度だけ除草剤を使う。無農薬米の田を増やせないのは費用面ではなく、草取りを担う人材がいないことだという。「昔はおったけどね」。
消費者の食への関心が高まり「安全安心、本物を求める時代になった」という。渡部さんの米は05年に全国米・食味分析鑑定コンクール総合部門で金賞、06年に特別優秀賞を受賞した。一昨年は初めて米が完売、昨年の新米も無農薬米は既に完売状態だ。
この日も渡部さん宅に注文のファクスが届いた。「このお客さんもずっと買ってくれているんですよ」。「びっくりするほどおいしかった」「本当においしかった」と手紙も届く。「励みになり、いいものを作ろうとがんばれる」という渡部さんは、畑で採れた野菜も米と一緒に送る。
「農業は金にならない。厳しい」。食への関心が高まった今でも、採算はとれない。それでも、渡部さんの探求は続く。昨年から、土壌中のラン藻を増殖させ、有用な成分を作り出す「ピロール農法」に取り組んでいる。「生きがいでやっていることだからね」と笑顔で語った。しかし、このあくなき探求心が、「仁多米」ブランドを支えていくと信じる。【御園生枝里】
◇
昨年は、事故米の食用転売や、中国製冷凍ギョーザなどから基準を超える農薬の検出、産地偽装など、日本列島で食への信頼が揺らいだ1年だった。翻って島根の地に目を向ければ、消費者の笑顔を思い浮かべながら生産に挑む人たちがいた。食材にこだわる姿を伝え、私たちの足元の食を見つめ直す。=つづく
毎日新聞 2009年1月1日 地方版
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