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とはずがたり数理解析研究所講究録

16とはずがたり:2017/12/23(土) 07:26:39
>>15-16

スケールフリー・ネットワークはグラフで見ると分かるように、「平均的な数」の枝をもつ頂点というものは存在しない。枝の数には、なめらかに減少するヒエラルキーがあるのみである(これは「ロングテール」とも呼ばれる)。この分布は、ある枝の数を持つ頂点数に平均や分散などの尺度(スケール)が存在しないので「スケール」「フリー」と名付けられた。

下の図は、『新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く』(アルバート・ラズロ・バラバシ、 青木薫訳)より改変引用させていただいた。左は従来考えられていたランダムネットワークで、k本の枝を持つ頂点の数N(k)は確率的に分布するため、正規分布に従っている。ここでは、ずば抜けて多くの枝を持つ頂点が存在する確率はきわめて低い(存在しない)。右はスケールフリー・ネットワークで、k本の枝を持つ頂点の数はベキ法則に従う。大多数の頂点はごく少ない数の枝しか持たないが、一部のごく少数の頂点は莫大な多さの頂点を持つことを表している。それぞれの下に例として、都市をつなぐ高速道路網(ランダムネットワーク)と、空港をつなぐ航空経路網(スケールフリー・ネットワーク)が示されている、左では高速道路がものすごく多数集中する都市などというものは存在しないが、右では航空便が非常に多く集まる空港(ハブ空港)がいくつか存在している。このようにスケールフリー・ネットワークはランダムネットワークとは全く異なるネットワークである。

http://syodokukai.exblog.jp/iv/detail/?s=20771928&i=201406%2F03%2F74%2Fd0194774_2161124.jpg

(そもそも、確率に支配されるようなランダム・無秩序な事象は正規分布に従うとされる。一方、そこから秩序が生まれると(秩序の創発、相転移とも呼ばれる)、ベキ法則に従うようになると言われる。したがって、現実のネットワークは、全く無秩序な状態ではなく、秩序が創発した、ちょうど相転移を起こしたような状態でありベキ法則に従うことが多いとされる。なぜ、相転移でベキ法則が出現するかは、1971年にケネス・ウィルソンによる「繰り込み群」理論で証明されている。)

④ 「ネットワークの成長」と「ハブの優先的選択」
ランダムモデルは、(a)頂点は最初からすべて存在し、頂点数は一定という仮説の上に成り立っていた。(b)すべての頂点は対等という仮定もあり、互いに区別できないからこそランダムにリンクできたといえる。しかし、現実に存在するネットワークでは(a)(b)のような仮定は成り立たない。

現実のネットワークは、(1)頂点は1つ1つ増えていく(ネットワークは成長する)。(2)すでに多くのリンクを獲得している頂点(ハブ)は、新しくできた頂点から高い確率でリンクされる(ハブは優先的に選択される)、という2つの特徴を示す。バラバシは、この(1)と(2)の特徴を両方組み込むと、ネットワークはスケールフリーになることを以下の論文で示している。

ここに来て、古典的なモデル(ランダムグラフやスモールワールド・ネットワーク)は「静的」(?成長する)で、「ランダム性の仮定の上に成立」(?優先的選択)していたことに初めて気づいたわけである。


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