① 「ハブ」の存在
現実社会の友人ネットワークについて考えてみると、大多数の人は友人の数は数名だが、「友人の数がずば抜けて多い」人物が何人かはいる。これはウェブでも同様で、全ドキュメント(1999年で10億以上と言われる)の90%以上はリンクされる数は10以下であるが、ごく少数のページは100万近くリンクされている。後者はネットワーク上では「ずば抜けて枝の多い頂点」であり、ハブと呼ばれる。このハブは現実に存在するにもかかわらず、エルデシュのランダムネットワークでやワッツ・ストロガッツのスモールワールド・ネットワークでは生じない。では、ハブが生じるネットワークとはどのようなものなのか?
② ベキ法則
1900年代、イタリアの経済学者ヴィルフレード・パレートは、「収入分布は“ベキ法則”にしたがう」ことを発見。これは「世の中にはごく一握りのきわめて収入の多い人たちがおり、人口の大多数はわずかな収入しかない」ということを表す法則であり、後にパレートの法則とか「80対20の法則」などと呼ばれた(世の中のお金の80%は人口の20%の人という一握りの人たちが持っており、お金の20%はその他大勢の80%が持っている、ということ)。
③ スケールフリー・ネットワーク
ベキ法則は、正規分布(釣鐘型の分布)とは違って、①どこにもピークがなく、なめらかに減少する、②分布のすそ野は正規分布よりも広い、③ごく少数のきわめて大きい事象と無数の小さい事象が共存する状態を表すなどの特徴を持つ。バラバシは、枝の数と頂点の数がベキ法則に分布をスケールフリー・ネットワークと呼んだ。