確かに変化は起きている。世界の石炭火力発電量は19年、史上最大の減少を示した。国連の推計によれば、石炭火力による発電量は今後10年で3分の1にまで削減する必要があるのだから、これはいいニュースだろう。しかし、化石燃料資産を監視するNGO「Global Energy Monitor」が新たな報告書で詳しく解説している通り、中国は「石炭の時代は終わりだ」という共通認識を無視しているようである。
Global Energy Monitorで石炭プログラムディレクターを務めるクリスティーン・シアラーは、「中国は一時、石炭からクリーンエネルギーへの移行を進めているように見えました。しかし、石炭はいまも同国経済の主軸のままです」と語る。「排出削減に関して、残された時間はわずかです。ところがクリーンエネルギー開発は、石炭火力発電所の建設にとって代わるのではなく、同時並行で起きているのです」
Global Energy Monitorの分析によると、パリ協定で定められた目標達成のため、中国は今後10年のうちに石炭火力発電の容量を40パーセント削減しなければならない。だが、いまのところ実現の見込みは薄い。既存の約1,000ギガワットの発電容量に加え、中国は計121ギガワットの発電容量をもつ多数の石炭火力発電所を建設中で、これは他国すべての建設中の石炭発電容量を合計したよりも多い。