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西洋史

92とはずがたり:2018/10/15(月) 23:24:47

■合理的、人道的な共同体を形成したイスラム教

岡本隆司・京都府立大教授

 ――イスラム教には今日、原理主義や過激派が繰り返すテロ行為で、他者を排斥する非寛容な宗教というイメージが強いです。聖戦(ジハード)を唱え、武力で勢力を拡大しました。

 しかしイスラム教は「偶像崇拝」を否定し、「奇跡」を説かないなど、当時では最も合理的な宗教でもありました。唯一神(アラー)の前では平等な同胞で、聖俗・位階の区別もありませんでした。人道的な共同体を形成して、既存の諸宗教をしのぐ魅力があったのです。

 歴史的にみて、後のオスマン帝国などイスラム教の政権は法制度上、異教徒を抱合することを前提にしていました。オスマン帝国のケースでは、イスラム教の普遍性に加え、東ローマ帝国やギリシャ正教など在地の正統性も兼ね備えて、多数派ではないトルコ系の支配を可能にしました。欧米中心の歴史観からだけでは、史上の本質的なイスラム像は見えてきません。

 ――東アジアにも普遍性を持った政権が誕生しました。

 中国では人口の多い農耕の「漢民族」と軍事力で勝る遊牧の「胡族」が融合し、胡漢一体政権の「唐」が成立しました。事実上の建国者、太宗李世民は胡族の鮮卑の血統を引いていました。漢人向けには名門貴族「李氏」を名乗る一方、胡族に対しては「天可汗(テングリ・カガン)」でした。

 遊牧民と定住民は生態系・慣習の違いから互いに補完しあう関係にあります。その仲立ちをするのが商業です。唐は中央アジアのソグド商人の交易活動もコントロールして、広域の経済圏と支配圏を確立しました。

 ――アジア史的には遊牧、農耕の両民族に商業を抱き合わせた政権がグローバルな普遍性を帯びるのですね。13世紀に誕生したモンゴル帝国も同じ構図です。

モンゴル帝国は史上初めて、本格的なグローバリズムを達成した政権ともいえます。このときは石炭の大規模な活用という一種のエネルギー革命をはじめ、「唐宋変革」という一大技術革新も経て、新たな段階に達していました。ユーラシア大陸の大部分を覆った版図の広さだけではありません。行政や経済の分野でも世界的な基準を示して実施しました。

 初代のチンギス・カンが率いたのは、ほぼ純粋な遊牧軍事集団でした。しかし急激な版図の拡大を支えたのは、シルクロード東方のソグド系ウイグル商人と西方のイラン系ムスリム商人といった、いわば当時の国際資本です。税務・文書を扱うウイグル人や契丹人が行政を担い、ムスリム商人が経済改革を進めました。

 ソグド系とイラン系は、自らの通商圏を東西に拡大させていっそう大きな利潤を得る一方、モンゴル帝国も商人資本の資金力や情報力を利用して、征服統治をすすめていったのです。そのためそうしたソグド系・イラン系の使うペルシャ語が国際共通語でした。

 ――モンゴル帝国のグローバリズムは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。

 まず「首都圏」の建設があります。1つの都城ではなく、圏域を広げて城郭都市を互いに有機的に結合させました。遊牧民の移動と都市機能の組み合わせですね。その中間一帯に生産施設や軍事拠点を設け、統治の中枢機能を集中させました。

 経済面では商業の流通過程からの徴税システムを確立しました。モンゴル政権の保護下にあった数多くの商業資本がそのまま官庁化し、商業利潤の一部を税収として上納しました。政権に近い大手企業に一括して徴税を担当させることが、政権側にも商人側にもコスト最小の簡便な方法だったのです。

 通貨政策では銀建て紙幣の発行です。銅銭や絹布に代わる通貨としての紙幣発行は以前から始まっていましたが、問題は発行した紙幣の信用維持でした。モンゴル政権では財政・政務を取り仕切る国際資本が、銀を裏づけとしつつ紙幣の発行・回収を調整し、需給の均衡を保つことで、紙幣の価値を維持したのです。


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