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西洋史

88とはずがたり:2018/04/01(日) 19:45:27

 この時代、農作物を生産するのは領民である小作人であり、そこから年貢を徴収するのは領主の手下たちである。家の中のこまごまとしたことは執事以下の屋敷内のスタッフがすべて行ってくれる。となると、ジェントルマンは意外と暇である。
 とにかく仕事は領民がすべてやってくれるし、生活に困ることもない。「もし自分がそうなったら?」と考えてみると、暇を持て余しそうである。

 そこで近代のジェントルマンたちが何をしていたかというと、2つあり、ひとつはとにかくお金を使って消費する。もうひとつが投資話に花を咲かせることになる。

 イギリスにはノブレスオブリッジ(貴族の責務)という言葉があって、財産を持つものはきちんとお金を使わなければならない。夏は避暑地の別荘に家族だけでなく使用人を引き連れて移動し、そこでたくさんお金を使う。ロンドンにも頻繁に出かけ馬車や宿などの旅費でたくさんお金を使う。身なりもきちんとして高価な毛織物を購入する。

 イギリスではパブなども階級別になっていて、ジェントルマンはジェントルマン階級が入るべきお店でしかビールを飲むことはできない。庶民のパブなら5分の1の値段でビールジョッキを注文できるからといって、安いお店に入ることは許されず、わざわざ高いお店でビールをたしなまなければいけないのだ。

 ちなみにこの名残が高級ホテルに完備されているミニバーである。われわれ日本人は「なぜ缶コーラ1本が500円もするのか!」と憤慨して、ミニバーを使わずにコンビニで購入したコーラのペットボトルを部屋に持ち込むのであるが、イギリスのジェントルマンはそんなことはしない。ザ・ペニンシュラやザ・リッツ・カールトンといった格のホテルに泊まるのがノブレスオブリッジであり、そこに置いてある500円のコーラを飲むのもノブレスオブリッジとして当然の習慣として振る舞うわけである。

ジェントルマンのポストがなくなった

 話を戻すと、ジェントルマンの経済社会におけるひとつめの役割が、消費することでイギリス経済を循環させることにある。そしてもうひとつの役割が投資である。近代になるとジェントルマンの間では海外投資話が活発になる。

 この時代、ジェントルマンたちはロンドンのコーヒーハウスに集って投資話に花を咲かせる。海外に向かう商船に投資して、貿易で儲けることがジェントルマンの財産運用として重要になってくるのである。世界最大の損害保険会社ロイズは、このコーヒーハウスで貿易保険が考案されたことに発祥している。

 このようにジェントルマンたちが「植民地経営」を始めたことは、現代的視点から見るとその是非が問われる論点ではあるが、のちのちジェントルマン階層の変質をもたらした。
 というのは、ジェントルマンの家庭でも次男以下の兄弟については、その地位をどうするかという問題がついてまわっていたからだ。最初は家を継ぐことができないジェントルマンの次男は弁護士や医者といった知的職業に就くことでジェントルマンに準じた地位を得ることができた。ところがそういった職業が世襲されていくと、新しいジェントルマンの次男や三男のポストがなくなってくる。


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