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西洋史
104
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とはずがたり
:2019/01/06(日) 19:07:08
労働者階級はもはや中流なのではないか? そして、それでみなハッピーなのだから大いに結構ではないか?
だが、そのような単純で単線的な物語は、複数の意味で間違っている。それがなぜ間違っているのかを、ある映画からのやりとりを入り口に論じてみたい。
──「生まれの貧しさでは人生は決まらない」と言いたい。学ぶ意欲さえあれば、変われるんだ。
──「マイ・フェア・レディ」みたいに?
これは、映画『キングスマン』(2015年)での、コリン・ファース演じるジェントルマン・スパイのハリー・ハントと、タロン・エガートン演じる下層階級の青年エグジーとのあいだのやりとりである。
その原作はイギリス(アイルランド)の劇作家ジョージ・バーナード・ショー(1856年?1950年)の劇作品『ピグマリオン』(1913年初演)である。
『ピグマリオン』では、言語学者ヒギンズが、ロンドンの花売り娘であるイライザのひどいコックニー訛りを矯正してレディに仕立てられるかどうかを友人と賭け、みごと社交パーティーでイライザをレディとして通すことに成功する。
ピグマリオン物語とは、つまりは階級上昇物語である。
ただし『キングスマン』は、時代の刻印を帯びている。
二つ目は少し後で述べるとして、一つ目は、主人公のエグジーが「チャヴ」である、という点だ。
「チャヴ」とは何か。チャヴ(chav)という言葉は、2000年代からイギリスのメディアで盛んに使われるようになった言葉である。
この言葉が指しているのは、カウンシル・ハウスと呼ばれる低所得者向けの集合住宅に住み、トラックスーツ(ジャージ)を着て、バーバリーをはじめとするブランドもの(偽物である場合も多い)を好んで身につけ、ベースボールキャップをかぶり、金属アクセサリーをじゃらじゃらとたらした下層階級の不良たちである。
現代のピグマリオン物語が、チャヴの階級上昇物語となっていることにはどんな意味があるのだろうか? それを考えるために、チャヴという人物像(もしくは階級の名称?)がもてはやされた歴史的意味を確認しよう。
チャヴは、それまでの労働者階級とはかなり違う人物類型だ。それが表現するのは、2000年代以降のイギリスの新たな階級の政治であり、またそれが隠蔽するのは、階級と貧困をめぐる過酷な現実なのである。
イギリスのアンダークラス=チャヴの出現は「過酷な階級化」の序章だ
なぜ2000年代になってチャヴという人種がメディアを賑わせるようになったのだろうか。ひとつには、単に、労働者階級でさえない新たなアンダークラスがイギリスに生じているという事実があり、それをチャヴという類型が代表しているということであろう。
ただし、チャヴがアンダークラスであっても、アンダークラスがすべてチャヴであるわけではない。
では、なぜほかならぬチャヴがアンダークラスを代表したのか?その理由を考えるためには、この言葉の流行のもうひとつの側面を見なければならない。これについては、イギリスの若き社会評論家オーウェン・ジョーンズの著書『チャヴ──弱者を敵視する社会』(依田卓巳訳、海と月社、2017年)に詳しい。
ジョーンズによれば、チャヴという言葉はとりわけ2010年以降のイギリス保守党の緊縮政策(とりわけ福祉のカット)において利用された。保守党はチャヴと呼ばれる種類の人たちを、まじめに働きもせずに失業保険などの福祉を不当に享受している人びとだとした。
ともかくも、チャヴは、新自由主義的な競争社会となったイギリスで生じた負け組アンダークラスの名前であると同時に、まさにその新自由主義を押し進め、社会的な福祉をカットするのに利用されたのである。日本でも見たことのある光景である。
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