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各種イノベーション・新発明・新技術など

232とはずがたり:2015/03/26(木) 13:14:32

 既存の技術を使うとはいっても、多様な製品を造るために開発体制は大きく変えなければならない。事実、筆者がサムスン電子に在籍している間、同社は日本企業とはまったく異なったものづくりのプロセスを確立していった。そのプロセスで同社がとりわけ重視したのがスピードだ。

 コモディティー(日用品)化されたテレビのような製品は、わずか3カ月程度で開発する。「旬」の短い携帯電話機やスマートフォン(スマホ)などはもっと速く、2カ月ほどで次々と新機種を開発していく。日本ではまだ1〜2年はかかる会社もあるようだ。

■高速開発手法としてのリバース

 その素早い開発を可能にしたのが、一つは汎用部品の徹底利用であり、もう一つが日本製品をベースにするリバース・エンジニアリングだ。ここでリバース・エンジニアリングは、単純な模倣とは区別して考えなければならない。

 単純な模倣では元の製品より良いものは造れないが、リバース・エンジニアリングは製品の設計思想にまで踏み込む方法であるため、元の製品とは異なった、新たな別の製品を開発できる。

 リバース・エンジニアリングの出発点になる日本製品は、サムスン電子の立場で見れば、ありとあらゆる機能が盛り込まれた複雑なものだ。これを機能単位に分解していき、要らないと思う機能があればそれを省いて、ほかに必要と考える機能があれば追加する。つまりは派生製品といえるが、これでワクワク感のある製品を目指すのである。

 往々にして、日本製品には日本人にも使い切れないほど実にたくさんの機能があるために、機能の取捨選択は十分に可能で、機能を絞って安くしてもなお十分に売れる製品になる。さらに、取捨選択次第で実に多くのバリエーションを生み出せる。一方で、サムスン電子がインド市場向け冷蔵庫にカギを付けたように、必要だと判断した機能は積極的に追加する。

 要するに、ベースになるモデルは日本から買ってくれば済む。そこからさまざまな製品を派生させる作業のみを実行すればよいから、非常に速く製品を開発できるわけだ(図3)。

http://tohazugatali.we b.fc2.com/industry/7555915012082014000000-PN1-13.png
図3 リバース・エンジニアリングによる製品開発。製品の構造だけをまねるのではなく、どのような機能から構成されているのかを解きほぐし、再構成して別の製品をつくり出す

 もし、元の製品の機能まで戻らずに構造をそのまままねすると、これは中国で特に目立つ、知的財産権を侵害した「コピー商品」になってしまう。

■単なるまねとは違う

 分かりやすい例として、コップの設計開発を考えてみよう。元の製品に取っ手が付いていたとすると、リバース・エンジニアリングでは、なぜ取っ手が付いているのかを考える。つまり、元の製品設計者が取っ手を付けるに至った設計思想を読み取ろうとするわけだ。

 すると、これはどうも熱いものを運ぶために必要なのではないか、などと推測できる。そうなれば「冷たいものしか入れないコップであればこの取っ手はいらない」と判断できる。これがすなわち、機能の引き算に相当する。しかるべき設計思想の下に機能を省くことができるのである。

 しかし構造だけをまねすると、こうはいかない。なんだか取っ手が付いているから、意味はよく分からないけれども派生モデルでも付けておこう、といった具合で、設計思想にまで踏み込んだ検討はしない。それでいてコスト削減のために、何か手っ取り早い手段でいい加減に付けるため、後でぽろっと取れたりする。これが、いわゆるコピー商品だ。

■イノベーションなき開発

 こうしてサムスン電子は、リバース・エンジニアリングによって、既存技術の組み合わせだけで売れる製品を生み出せるわけだ。注目すべきは、これで同社が世界的なヒット商品を飛ばし続けた点だ。今回の連載で繰り返し述べているように、グローバル化の時代にコモディティー化した製品を売ろうとしたら、そこで必要なのは顧客から見える便利さやワクワク感であり、残念ながら技術が革新的かどうかはあまり関係がない。


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