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各種イノベーション・新発明・新技術など

193とはずがたり:2014/04/04(金) 20:53:49
>>192-193
 例えば、あるコップに取っ手が付いていたとする。サムスンのリバース開発は、何のためにその取っ手が付いているのかという、設計思想まで遡っていく。すると、「熱いものを入れるために取っ手が付いている」ということが推測できる。そして、「この地域では冷たいものしか入れないから、取っ手はいらない」と判断すれば、それを省く。

 ここで、単純な物まねをするのなら、ただのコピー商品にしかならない。例えば構造をまねするだけの中国製品であれば、「取っ手」というものが付いていることは分かっても、それがなぜ付いているのかまでは分からない。だから後から安い材料で適当に付けて、すぐにぽろっと取れてしまったりする。最近は中国もリバース・エンジニアリングの域に近づきつつあるようだが、構造をコピーすることと、設計思想まで遡ってリバースすることでは、大きな違いがあるのだ。

製品開発プロセスからみた技術的発展段階

 このリバース・エンジニアリングを用いれば、新たな技術を開発するのではなく、既存の技術を組み合わせることによって、多様な製品を生み出すことができる。部品も独自開発するのではなく、汎用部品を組み合わせることで、短期間かつ低コストで開発することが可能になる。

 フォワード・エンジニアリングは価格競争に巻き込まれて利益が減り、投資ができなくなると撤退に追い込まれるが、リバース・エンジニアリングなら、市場を専有すると大きな利益を生み出すことができる。

「立ち食いそば方式」の世界戦略

 このようにサムスンは多種多様な製品を提供しているが、すべてが一から違う製品というわけではない。プラットフォーム(基本部分)は共通化しておき、途中のある段階から切り替えるようになっている場合がほとんどだ。この生産方式を筆者は「立ち食いそば方式」と呼んでいる。

 立ち食いそば屋では、そばでもうどんでも、つゆは同じだ。注文があれば、あらかじめ茹でてある麺を温めて、そのつゆに入れる。注文が天ぷらそばであれば天ぷらをのせ、月見であれば卵をのせる。天ぷらそばと天ぷらうどんでは、同じ天ぷらを使っている。そのような手順になっているから、天ぷらそばでもきつねうどんでも、作り方はほとんど同じで、必要最小限の手間とコストで提供できるのだ。

 「デカップリングポイント」という経済用語がある。これは、あらかじめ生産を進めておく部分と、顧客の注文に合わせて対応する部分を分ける「切り離しポイント」のことを指す。この設定がうまくいけば在庫リスクは低くなり、迅速で効率的な生産が可能になる。立ち食いそば方式のやり方もそれに似ている。一般のそば屋の利益率は3割以下なのに対し、立ち食いそば屋は7割ほどにもなるという。たとえ単価は低くても、無駄を出さずに回転率を高くできるので、それが可能になるのだ。

 電機製品も同様だ。ベースとなるかけそばやかけうどんに、その地域の人たちが求めているトッピング(機能)をのせることで、ニーズに合ったものを安く素早く提供する。このシステムは、新興市場だけでなく、いまや先進国の高級品市場でも躍進するサムスンの大きな武器になっている。

 一方、多くの日本企業はいまでも、プラットフォームは同じでも、異なる市場向けに設計、生産と、順番にプロセスをたどる従来のやり方をとっている。この方法だと、製品開発に時間がかかるし、部品の調達もそれぞれがその都度行うなど、コストもかさんでしまう。

 このようにグローバル市場では、顧客が求めるさまざまな製品を、速く安く提供できる仕組みがあってこそ、より多くのニーズにスピーディーに応え、利益率を高めていくことができる。たとえ技術的には後発であっても、「多品種少量生産」で利益を出す体制を構築できれば、競争面で優位に立つことができるのだ。サムスンの「多品種少量生産」を可能にした、ものづくりのプロセスをはじめとするさまざまな革新については、次回改めて取り上げたい。


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