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人口問題・少子化・家族の経済学

1789とはずがたり:2017/12/31(日) 20:00:22

行動経済学と神経経済学は標準的経済学を変えるのか
瀧澤 弘和
中央大学経済学部教授・東京財団仮想制度研究所
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pcs/2010/54/2010_67/_pdf

行動経済学(behavioral economics)は,1970 年代にカーネマン=トヴァースキーらによって発展させられた経済心理学と,ここ二十数年の間に急速に発展してきた実験経済学の中から生まれてきたもの

それは,一つの学問分野というよりも,標準的経済学で長い間仮定されてきた人間像,すなわち合理的経済人(homo economicus)の想定を外し,人間の選択行動のリアルなあり方とその経済学への含意を探求する経済学研究のアプローチともいうべきもの

最近は,人間の経済行動を機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)など,さまざまな神経科学的手法を用いて解明しようとする一連の研究が登場してきた.これが神経経済学

理論的予測と実験結果との乖離が誰の目にも明らかとなってきたことである.たとえば,囚人のジレンマを 1 回限りでプレーさせるときに,被験者のかなりの割合が理論的予測に反して協力行動を取ることが知られている.また,最後通牒ゲームの実験でも,理論的予測に反し,プレーヤー同士でパイを半々に近い割合で分け合うことが知られている

人間の心に対しても進化論的見方を適用すべきだとする考え方が徐々に影響力を増し,それが認知心理学の発展と結びついて,人間行動を自然科学的に理解しようとする傾向が強化されてきた

人間の脳を進化的適応環境(EEA)の中で進化してきたモジュールのシステムとして理解しようとする進化心理学は端的な例である(Toobyand Cosmides 1992)


行動経済学的研究と名づけられる研究の中でも,大きく 2つの流派に区分することが可能

われわれは日常的に,自分や他人の行動に関する予測や説明を求められたときに,「ある主体 xが d を欲しており,当該環境において a が d を達成するための手段であると信じているならば,x は a を行う」というような形式にのっとった説明を心に抱くのが常である.われわれが日常的に人間行動に対して帰属させるこのような心理学は,「素朴心理学(folk psychology)」と呼ばれている.これからの議論のために素朴心理学を少し言い換えておくと,この人間行動のモデルにおいては,主体は,何を欲するかという「欲求(desire)」ないし「選好(preference)」を持っており,それとどのような行動が自分の欲求達成に有効かという「信念(belief)」とを組み合わせて最適な行動を選択するとされている.
こうした人間行動のモデルを用いる場合には,考察の対象となる人間の選択行動は意図的・意識的に行うものに限定されることに注意されたい.
伝統的に,哲学者や社会科学者たちは,信念と選好を所与にして意図的・意識的に行う行動のことを行為(action)と呼び,非意図的・無意識的な行動のことを,( 狭い意味での ) 行 動(behavior)と呼んで区別してきた。

上で述べた行動経済学の2 つの流れの区別は,この素朴心理学に対する態度にかかわるものである.
<行動経済学Ⅰ>
一方では,人間の行為を説明する際,素朴心理学におけるように,それを信念と選好の組み合わせによって「理解」していこうとする立場が存在する.この立場においては,信念と選好の組み合わせによって説明可能であることは,しばしば「合理性」の定義特性として捉えられる.=「合理主義」的立場
<行動経済学II>
他方では,自然科学的な因果論の立場から素朴心理学を批判し,行為と行動を区別することなく,人間行動一般に対する予測の精度を高めることを目的として,自然科学的に人間行動を解明していこうとする立場がある.=「自然主義」的立場


Fehr and Schmidt (1999) の不平等回避のモデル,Rabin (1993) の公平均衡の概念などは,伝統的な利己的な個人の選好とは異なる選好を考えているとはいえ,個々人が明確な信念と選好を持って選択を行っていると想定されているので,行動経済学Ⅰの理論であることになる.また,McKelvey and Palfrey (1995, 1998) の質的応答均衡(QRE)も,プレーヤーたちの最適反応にノイズが入っていると考えているものの,均衡において,各プレーヤーは他のプレーヤーたちの選択を予測し(すなわち信念を形成し),それに対して最適反応を行っているので,やはり行動経済学Ⅰに属する理論である.Stahl and Wilson(1995) などの研究は,合理性には階層性があると想定し,ナイーブなプレーをする人々から,かなりの戦略的な深読みをする人までを想定し,一定の人口分布が存在すると考えているが,ここでも人々は信念と選好を持って,それを所与にして最適な行動をとっていると考えているので,やはり行動経済学Iに属している


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