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近現代史綜合スレ

615名無しさん:2015/08/15(土) 21:11:59
>>614

模範国としてのナチス・ドイツ
 注目すべきことに、亀井貫一郎「この世界観──自由主義を揚棄する所以」が同じ号に掲載されている。亀井貫一郎とは、社会大衆党の幹部のひとりで、近衛内閣の成立に協力した人物である。当時、亀井は前年に訪問したドイツから帰国し、近衛新党の結成を画策していた。

 亀井は同論考において、「日本はナチス・ドイツの真似をしているとよくいわれる」と言う。ところが亀井によれば「これはまちがいで、実はナチス以前の統制の真似をやっているにすぎない」。日本はナチス・ドイツと同様に「新らしい文化を建設するために、自由主義を揚棄するのである」と力説する。

 「そのためには男性も婦人も『性』を超越し、一つの目的へ向わねばならない、この世界観さえしっかりしていれば、末梢的な梅干弁当や、見当違いの勤労奉仕などから起る矛盾も解消すると思う」。

 ナチス・ドイツは男女間の格差を是正する新しい文化と生活様式を創造する国である。亀井にとってヒトラーのドイツは、この意味で日本の模範国だった。

 ドイツの社会的な影響は『ホーム・ライフ』にもおよんでいる。その具体的な現われの一つが日本の「民族優生保護法案」への関心である。大和民族をより強く、より立派にしようとする法律にもとづく民族強化政策は、明らかにナチス・ドイツに範を求めたものだった。

 同誌の1939(昭和14)年12月号は、「京大講師・医学博士藤森速水」に「ドイツに留学中何かと見聞したナチス・ドイツの民族強化政策」を語らせている。藤森は言う。

 「国家が権力をもって人たるの本能を奪うのは怪しからんと説く人があるが、これは大変な誤解である。今日の進歩せる手術をもって断種法を施す場合、被手術者に何らの苦痛を与えず、しかも手術後も何ら人生の本能を阻害することなく生殖能力を差止めることができる」。

ヒトラーの下での平等──山田耕筰がみたドイツ
 ヒトラー・ユーゲントをとおして生まれた共感のさきにあったのは、優生学への関心だけではなかった。以下ではドイツで見聞を広めたふたりの人物に注目する。

 ひとりは音楽家の山田耕筰である。山田は1938(昭和13)年1月13日から15日の『東京朝日新聞』に「ナチ独逸人を語る」を連載している。このなかで山田は、ベルリンフィルハーモニーによる自作の曲の演奏会のことにふれる。山田は見逃さなかった。入場券には「この演奏会、ユダヤ人の入場を許さず」と記されていた。

 しかし山田はユダヤ人差別の是非を論じることなく、別の点でドイツ人を賞賛する。「独逸人の性格でまた最も尊敬すべきものの一つに身の程を知るという美点がある」。「身の程を知る」とは何か。「床屋は床屋として、下僕は下僕として其職を蔑まない。あらゆるものがその与えられた職分を守って精進する」。これがドイツ人にとって「身の程を知る」ということだった。

 他方で日本においては、山田によれば、たとえば「車夫」が弁護士になるといった「成功線上を彷徨して夢の成功を握」ろうとするという。これではいけない。ドイツ国民の「健康性」は「吾が国の現状には移し植えて培うべき特性である」と山田は言う。

 要するに山田が感嘆したのは、ヒトラーの下でのドイツ国民の平等だった。ヒトラーの下で職業の貴賤はない。ヒトラーの下で社会的な格差が是正される。

 「持たざりし大多数の者が持ち得ざりしあるものを与えられて、はじめて僅なる陽の目を喜び楽しんでいる……。国家社会主義ナチの現象としてはこれはあまりにも当然すぎる事実である」。

 山田は叫ぶ。「この勝れた盟邦独逸と独逸国民の上により多き祝福の加えられんことを祈念し、Heil Hitler!」(『東京朝日新聞』1938年1月15日)。山田はヒトラーの国家社会主義による社会の平等化に日本の理想を見出した。


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