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近現代史綜合スレ
393
:
名無しさん
:2010/05/26(水) 13:44:51
ジョン・ウォーカー・ジュニア・スパイ事件
「防衛取得研究」(第一巻 第一号)(平成19年06月)<PDF>
070630aquisionresearch_spring
http://www.bsk-z.or.jp/kakusyu/pdf/070630aquisionresearch_spring.pdf
米海軍スパイ事件の教訓
主任研究員高知尾隼
はじめに
本事件が明らかになって既に20年以上が経過したが、事件の全容を紹介している「FAMILY OF SPIES」の日本語の翻訳本がないためこれを抄訳し、併せて当事件から教訓を導き、防衛省職員及び防衛関連企業関係者の秘密漏えい防止に資することをねらいとする。
1 事件の概要
本事件は、1967年、当時米海軍准尉であったジョン・ウォーカーが、ソ連大使館に暗号規約を持ち込み、以後退役まで現金と引換えに暗号規約、暗号機のテクニカルマニュアル、米海軍の作戦基本計画等を提供し、1976年退役後は、海軍の友人ジェリー・ウィットワース、兄アーサー・ウォーカー及び息子のマイケル・ウォーカーから引き続き海軍の情報を盗ませ、ソ連に渡すことにより、米国の国防のバックボーンに大打撃を与えた。
離婚していた妻バーバラが、1984年末、FBIにジョンのスパイ行為を通報し、翌年一味は逮捕された。
この間に、米海軍の100万通の電報が解読されたといわれる。
2 ソ連との取引
1967年4月、ジョンは当直中に第2次大戦から最もよく使われている暗号機KL-47の暗号規約を複写し、当直明けにワシントンにあるソ連大使館に赴き、これを渡すとともに暗号機等の情報を提供できることを申し出た。
後日バルチモアの路上での会合で、ジョンはベトナム戦争で使用していた暗号機KW-7と暗号規約、水中固定機器(SOSUS)等に関する資料を提供できることを、ショッピングリストとしてKGBエージェントに手渡した。
KGBは、情報資料は複写によることなく、ソ連側が用意するMinoxカメラで撮影すること、情報資料及び現金の授受は、デッド・ドロップ(情報提供者が情報を、工作員が現金をそれぞれ指定地点に置き、お互いが顔をあわせることなく持ち去る)によることをメモ書きした紙きれを手渡した。(ジョンの逮捕までにデッド・ドロップは30回に及んだ)
ジョンは退役までソ連にKW-7等の暗号規約を半年に1回程度渡していた。(ソ連は、傍受電報をテープに録音しておき、数か月遅れで解読していたと考えられる。)その他、米ソ間の戦争開始時の米海軍の攻撃基本計画、SOSUSのマイクロフォンの敷設位置、沈没した米原子力潜水艦スコーピオンの捜索情報等が渡されている。
3 海軍の友人ジェリー・ウィットワースのリクルート(スパイ組織への引き込み)
1974年ジョンは退役後の情報提供者として、サンディエゴの通信学校勤務中に知り合ったジェリーに、ユダヤに秘密を売れば月4千ドルになると持ちかけた。
ジェリーは1976年から1983年の間、インド洋のディエゴワルシア基地や空母エンタープライズから、KW-7暗号機や新しい暗号機の技術情報や暗号規約を持ち出し、ジョンに渡していた。
これらは米海軍にとって最大の被害であったと連邦検事は述べており、ジェリーの情報に対するソ連の支払いが、月1万ドルに上っていたことからも情報の重要性が理解できる。
4 兄アーサー・ウォーカーのリクルート
アーサーは、海軍少佐で退役後、1975年からジョンの資金援助を得てカーステレオ販売店を経営していたが、1979年に倒産した。
アーサーは海軍と最大の取り引きを持つVSE社に勤務し、ノーフォークでの艦艇のオーバーホールに関する仕事に従事していた。
ジョンは、ジェリーだけに情報を頼ることに不安を持ち、アーサーを仲間に引き込むことを考え、1980年、過去の資金援助の見返りに、アーサーに秘密区分のない資料をコピーするように要求した。ジョンは、この資料に対し4千ドルを支払い、以後秘密資料を提供するよう要求した。
第7艦隊旗艦ブルーリッジのダメージ・コントロール・ブックや強襲揚陸艦の技術資料及び両用戦艦艇の過去5年間の故障発生に関する情報がソ連に渡された。
5 息子マイケル・ウォーカーのリクルート
マイケルは、ジョンとバーバラの4人の子供の末っ子であり、父を一番よく慕っていた。ジョンは情報源を確保するため、マイケルを海軍に入隊させた。
ジョンはマイケルが空母乗組みになると、他の乗員が家族にしているように長期行動について知らせるよう言い含め、さらに複写した秘密文書に1か月5千ドル払うと持ちかけた。
F-14戦闘機、トマホークミサイル、スパイ衛星及び新型機雷に関する資料が空母ニミッツから持ち出されたが、ソ連に渡ったかは不明である。
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