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フランス語フランス文化質問箱

34Sekko:2006/06/08(木) 21:42:16
ジェリコーとコメディ
 今リヨンでジェリコー展をやってます。ジェリコーといえば、ルーヴルにあって、日本の小中学校の美術の教科書にも載っていたと記憶する『メデューズ号の筏』で、ドラマティックだけどアカデミックなイメージです。でもこの人、フランス革命のさなかに生れ、1824年に33歳で死んだんですけど、ナポレオンの成功と没落、ルイ18世の王政復古と死、という、フランスの誇る共和国理念が、現実の嵐の中でぼろぼろがたがたになってどうしていいか分かんない、という政治的激動と危機の時代を生きて、すごく政治的な画家だったわけです。晩年に描いた『死馬』の画などは、メデューズ号と違ってミニマムにシンプルな一頭の馬だけなんですが、ひとつの時代が、完成せず、失望とともに終わったという悲劇が、諦念と鎮魂を凝縮して表現されてます。そして、メデューズ号の筏はその別の表現で、ミシュレーが、これはフランスだ、と言ったそうです。共和国の旗を掲げながら共食いし、屍累々、嘆いている者、救いを待っている者、波は荒く、空は暗雲立ち込め・・・
 それで、今回のジェリコー展の評といえば、そういう時代と今のフランスを必ず重ねるわけですね。一見自虐的とか絶望が深いとかも言えますが、こういう表現の中に文化的カタルシスがあるわけで、スペインにとってのゴヤのように、一番つらいところを引き受けて力の源泉にしてくれるような、こういう国民芸術財産があるのはいいなあと思います。


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