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81nishiyan:2023/12/15(金) 12:06:26
本日の詩「跳ばずに歩いて行く」についての更新メモについて。
島尾敏雄はわかりませんが、伊東静雄にそんなフレーズがあったなと思って調べてみたら、第一詩集の『わがひとに与ふる哀歌』に、「秧鶏は飛ばずに全路を歩いて来る」という詩が収められています。以下、青空文庫『わがひとに与ふる哀歌』より。伊東静雄が、秧鶏の姿を自己像のように描写しています。

 秧鶏は飛ばずに全路を歩いて来る

秧鶏(くひな)のゆく道の上に
匂ひのいい朝風は要いらない
レース雲もいらない

霧がためらつてゐるので
厨房(くりや)のやうに温(ぬ)くいことが知れた
栗の矮林を宿にした夜(よ)は
反(そり)落葉にたまつた美しい露を
秧鶏はね酒にして呑んでしまふ

波のとほい 白つぽい湖辺で
そ処(こ)がいかにもアツト・ホームな雁(がん)と
道づれになるのを秧鶏は好かない
強ひるやうに哀れげな昔語がたりは
ちぐはぐな相槌できくのは骨折れるので

まもなく秧鶏は僕の庭にくるだらう
そして この伝記作者を残して
来るときのやうに去るだらう


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