4「常住のものは、しかし、詩人がこれを建設する」(?,63)
(浜田訳:「留まるものを創設するのは、しかし詩人たちなのだ」
Was bleibet aber, stiften die Dichter.)
斎藤訳で「建設する」とあるのは、stiften で、浜田訳はこれを「創設する」と訳する。辞書では、たとえば、a)(…のための)[設立]基金を出す;(…を建設する);(…を)寄贈する、寄付する、喜捨する……b) 創立する、設立する。名刺形 Stift には(寄付によって設立された宗教上の団体・施設;)宗教財団;理事会;参事会;修道院;神学校;司教区本部……などの訳がつけられている。その寄付金や基金が Stiftung、これはまた寄付という行為をもさす。このようにかなり特殊な使い方をする語であるのに加えて、ハイデガーはさらに他の文脈でもこの語を用いていて、それぞれに特殊なニュアンスを与えているらしい。ようするにハイデガーが、詩人が stiften する、と述べたここの意味を深く追究し解明し解説する力が、私にはない。
寄り道はここで終わって、ハイデガーの論旨を続けよう。
留まるものは必ずしも常住不動ではなくてむしろ速やかに移ろい去るが、どのようにしてこれを繋ぎとめるか。
「詩人が名づける。……詩人は本質的な言葉を語るものなるが故にかく名をよぶことによって存在するものが始めてその本質を規定せられ、かくて存在するものとして a l s Seiende 知られるにいたるのである。詩は言葉による存在の建設である Dichtung ist worthafte Stiftung des Seins.」