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伊東静雄を偲ぶ
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路上 習作稿
「ドイツ詩抄」大山定一翻訳本の裏表紙の余白に下記の走り書きを見つけた。静雄の字体だから詩の習作として書きとめたものだ。大山定一から贈られた本を読むうち創作意欲が湧き出たものであろうと勝手な推測をする。
中洲の一劃をはさんで
大川と堂島川がゆつたりと流れてゐる
ゆつたりと? さう ゆつたりと従順に
それは 流れてゐる
議事堂のドームが あざやかな緑青にかがやいて
やがて人々の群は爭うて
わが家にかへる時刻だ
乗物といふ乗物にとりついて
ここで途切れている。時期は戦後、大空襲の跡もまだなまなましい大阪、勤めが終り我さきに帰宅する人々、昭和二十二年「改造」十月号に発表された「路上」の原型と推定される。
路上
伊東静雄
牧者を失つた家畜の大群のやう
無数の頭を振り無数のもつれる足して
路上にあふれる人の流れは
うずまき乱れ散り
ありとある乗りものにとりついて
いまわが家へいそぐ
わが家へ?
いな!いな! うつろな夜の昏睡へ
ただ陽の最後の目送が
彼らの肩にすべり
気附かれずバラックの壁板や
瓦礫のかどに照る
そして向うに大川と堂島川がゆつたりと流れる
私もゆつくり歩いて行かうと思ふ
そして何ものかに祈らずにはをられない
――われに不眠の夜をあらしめよ
――光る繭の陶酔を恵めよ
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