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☆☆☆☆☆ 同 人 α ☆☆☆☆☆ - ニューロン・カフェ

4288万理久利:2016/05/12(木) 19:49:36
人生詩(最終回)−評
4年もの間、読み続けていると主人公家族や、大学寮仲間や、会社やラボの同僚、喫茶店
のおばちゃんたちとの別れが少々残念に思えてくる。それでもこの辺りが筆の納め時なの
だろう。著者の意図がどうあれ、今振りかえると日記の書き手の10代から60代までの
「生」を、季節の移り代わりの中で走馬燈のようにかけ抜けた印象がある。主人公だけで
なく周りの人達の「生」も。

日記という形式を取って、小さなしぐさやたわいない言葉のやりとりから、日常が映像と
して生き生きと浮き上がってくる。草花の描写からは季節の空気まで感じられてくる。そ
の時その時手に取った書物からは、主人公の興味の方向が見えてくるし、世界で起きてい
る事件からは時代も見えてくる。主人公に起きた大成功話も、大失敗話も、日記にありが
ちな感情の掃きだめとしての恨み辛みやぐちも見当たらず、当たり前の人間の日常を淡々
と綴っているだけなのに。

地球上では人類登場以来大小様々な事件や災害や紛争が起きてきたが、この作品に描かれ
ている、人々の平凡な生活、季節が変わっても毎日、陽が昇って陽が沈むという自然の営
みという壮大な流れの中に収まってしまうように思えてくる。

連載が始まった当初は3世代同月同日の日記を並べて進めていくこの作品をどう捉えたら
いいのか迷った。わくわくするような事件が登場するわけでもなく、書き手の心情吐露も
見当たらず、淡々と日々が過ぎていくだけだ。
そのうち、自分なりに人間関係図を書いてみたり、読んでいる本の傾向をしらべてみたり、
でてくる聞き慣れない植物や語句を辞書で確認してみたりするようにもなった。
ふと気が付くと読み手の私自身も日常の世界に引き込まれているではないか。
日常の小さなことの中に、使われている言葉の中に、季節の移り代わりの中にたくさんの
煌めきを見つけられることもよくわかってきた。

著者神野氏は、自分が創り上げた作品−小説でも絵画でも−、実に奥ゆかしい。恥ずかし
がり屋だ。色んなことに通じているのに、言葉の良さを知っていて、豊富な語彙を持って
いるに…。
ところがどっこい、作品は大胆だ。誰も思いつかないことをやり始める。
この「人生詩」もその一つではないか。
自分に対してはとことん奥ゆかしいけれど、その分だけ作品となると極めて大胆かつ緻密
な冒険家になる人なのだろう。

おわり
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