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☆☆☆☆☆ 同 人 α ☆☆☆☆☆ - ニューロン・カフェ

3631万理久利:2015/02/26(木) 20:16:59
シリーズ・セピア色の手帳―第二回 評
 物語は、いきなり金俊平の「血と骨」の話から始まる。眠りにつけない時に手に取る本
としては如何なものか。眠ることを許さない内なる荒ぶる心が、同じ刺激を求めてこんな
本を選はせることもあるのだろう。
主人公は天も死も恐れず、ひたすら凶暴なだけの人間、自らを制御する物指しなど一切な
い人間。性格も肉体も異常な程暴力的で常に外に向けて火を噴くような人間である。
 今回の「セピア色の手帳」の展開が気になってくる。人間の心、それも荒ぶる心、著者
自身の心のありようも含めて語られていくことを読者に予感させる。

 数頁だけ読み進めたアラン集の中で出てきたデカルト、UP(月刊誌)にあったエッセ
イ「認識の不確定性について−デカルトの悪霊」。続いてミステリー小説では「デカンシ
ョ節」。三度続けてデカルトの登場だ…。 偶然と必然の概念について考えこむ著者。
 そのデカルトのいうところの「方法的懐疑」を無意識的にも実践して生きてきたように
見える。手帳の中身は、自分を正統化するようなこと、自慢げなことは一切書くことをせ
ず、読み返すときも殆どが「悔恨の情」が大半だという。これではゆっくりやすらかな気
分で眠れるわけがない。

 主人公の性格が通勤のようすからもうかがえる。通勤タイムは貪欲な観察タイムだ。た
だしそれはあくまで離れて観察するもので通勤ラッシュの混雑での人との物理的接触を極
度に嫌う。若くして会社勤めを辞めた時の開放感が想像できる。
 その主人公の仕事ぶりが描かれる。建築家という職業の著者ならではの設計図作成要望
書が簡潔で、専門外の読者でも頷いてしまう。徹底的に問題点を洗い出し、無駄をそぎ落
とし、要望書の書き方と同様、ミスを抑えられる簡潔な図面になりそうである。批判の目
をさらに、商業主義に走る勤務先の会社、姉歯構造計算書偽造事件以来の役所のしめつけ、
余裕、遊び(誤差)を許さないデベロッパーの狡猾さに対しても向ける。
 仕事の進め方、やり方にも、「方法的懐疑」で迫っていくのだろう。本人は勿論、廻り
の人達は良いも悪いも手こずるに違いない。隙の無い、妥協を許さない仕事ぶりと、遊び、
余裕のある設計図、この対比が面白いが「目的にかなった建物」、まさしく「余裕有る建
物」を創るという点で合致するのだ。

 最後にトランストロンメルの詩「悲しみのゴンドラ」を読むところで終わる。
重く、もの悲しい空気、それでもゆったりと静かで穏やかな神秘的/幻想的な詩だ。
幽玄という表現もあった。眠れないときは、「血と骨」よりこんな詩がいい。
荒ぶる心から解き放たれて、夢の世界、別の次元に行ってしまいそう。
最後に主人公がこの本を選んだのは必然…。

おわりに
始めと終わりに出て来る「血と骨」「悲しみのゴンドラ」、2冊の本
「血と骨」「セピア色の手帳」、それぞれの主人公
必然と偶然
仕事という現実世界と想念の世界
対比が印象的だった。
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