したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。

☆☆☆☆☆ 同 人 α ☆☆☆☆☆ - ニューロン・カフェ

3346赤松次郎:2014/07/05(土) 09:22:51
山荘便り−20140704
 先日、呉 善花(O Sonfa) 著 「日本人はなぜ『小さないのち』に感動する
のか」という、村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』と同じ長さの
題を持つ本を読み終えた。昔の村上春樹の本はほとんど読んだが、少々「自分探し」とい
う共通するテーマに飽きたのと、物語の展開のあまりにも巧みな技に私の意識を繰られて
いるような危うさを感じた。そして過去の文豪と言われる人達ほど、人生に対しての深い
真理や物事の本質に迫っていないような感じがしたから、「1Q84」以後の新しい作品
には手を出していない。

 さて著者である呉という人は、1956年韓国・済州島に生まれ、1983年に留学生として来
日、その後1998年に日本に帰化した。現在拓殖大学国際学部教授である。本の内容は、
韓国と日本、及び西洋の文化の比較を論じているが、その項目を列記してみると自ずと日
本文化を好意的に見ていることがわかる。
 第一章 韓国人から見た日本人の不思議
 第二章 すべてを受け止める日本人の心の力
 第三章 自然と人間を区別しない感受性
 第四章 「安全大国日本」の伝統
 第五章 死生観と浄土を思う心
 第六章 聖なる母性への信仰が息づく日本

 まえがきの中に、古典生け花にたとえて「主体としての自己の側から自然を客体として
見つめるような視線はそこにありません。そこにあるのは、自然の側からやってくる眼差
しに感応していく個々の人間の研ぎ澄まされた感受性なのです。そこに、人間(主)と自
然(客)が分離することのない日本独特の世界があると感じられました」と述べている。
私が詳しく検証していない日本の特徴を「成る程そういう見方があるものか、なかなか捨
てた物ではないな」という所を著者は的確に指摘していて、いまさらながらその特異な日
本の文化を見直した次第である。
 私達日本人にとっては、外国から短所と見られていると文化、すなわち「yes」
「no」をはっきり言わないとか、いつもにこにこほほえんでいるなどが、必ずしもそう
ではないと思えてくるのである。勤勉さ、誠実さ、優しさ、寛容さが数千年の歴史の中で
醸成され、現代の清潔で真面目で安全な社会を可能にしたといえるのではないだろうか。

 ちょっと恥ずかしい位の著者の評価は、もう一度日本文化の良さを再認識させてくれ
た。外国に繁く通ったり、長く住んだりした人が、ごく僅かな日本のある部分を、それが
すべての日本の欠点である如く西洋の価値感で断罪しているのを見ると、その価値感自体
が揺らぎ始めていることに気づいていないような気がする。国を二分するような思想や宗
教や民族の諍いなく、平和で自由で安全な民主主義の成熟した国は世界の中でも極僅かで
しかないという思いに至った。






掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板