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☆☆☆☆☆ 同 人 α ☆☆☆☆☆ - ニューロン・カフェ

3222万理久利:2014/05/05(月) 11:29:21
『人生詩』評の2(完)
 題名は失念しましたが、20代のころ、「この本、絶対よむべきよ」と当時私が師と仰
いでいた魔法使いのおねいさんと心秘かに呼んでいたまるでヒッピー哲学者みたいな人が
一冊の本を貸してくれました。子供が主人公でその子の目線、言葉で書かれた物語(確か
アメリカの作家)です。何の変哲もない少年の日々を綴っただけのものですが、その本を
読み終えた時、忘れていた何かを思い出してくれたような、眠っていた自分の感性を引き
出してくれたように思え、不思議と感動を覚えたことがあります。
 それから数十年の歳月を生きてきた今、『人生詩』を読むと、10代/学生の頃、40
代/働き盛りの頃の日記にある空気は、あの本を読んだときと似た気分をもたらしてくれ
ていることに気が付きました。

 一刻一刻、毎日毎日、新しいものと出会いじっと観察し、なんだろうなんだろうと思い
ながらそれなりに掴み取っていくのが10歳くらいまででしょうか。そして少しだけ人間
世界のルール、掟みたいなものが分かりつつそれに反発したくなる学生時代。多かれ少な
かれ社会のルールに則り、また労働するという形で多くの人間と拘わっていく、あるいは
家庭を築き守っていくというのが3、40代です。その時その時の心の動き具合も変わっ
てくるのです。
 生まれた時から目は同じものを使っているのですが、見えるものも違ってくるようです。
小さな頃の目はまるごと受け止めて視てしまうのですが、大きくなるに従って、開き具合
を変えてみたり、目線を変えたりすることもする。丸々、そのまんまを受け止めなくなる
のです。年代ごとの視座と視力があるとでも言ったら良いのでしょうか。
??この作品はそれがよく伝わってきます。たとえば20代、学園祭のパンフレットを路上
に立って売る場面、狙いを定めた男、女、年齢もばらばら、その人たちの反応もばらばら
その人達の様子が20代の主人公の目線でうまく描写されています。その感想もその年の
主人公らしさがよく出ています。40代、電車の中で見た20代の若い男性ふたりの姿や
しぐさを何気に観察し、そろそろ家を妻のために建てたいが何せ金がないと悩み、運動会
から帰ってきた日焼けした息子の泥んこ汚れを見つけて銭湯に行かせるところなどは、ご
くごく普通だけれど親爺の心、目線がそれなりにしっとりと伝わってきます。

 60代、出席した18人の柔道部仲間との宴会は今回の山場でした。みんないいオッサ
ンになっていますが、一人一人へのコメント(描写)はそれぞれの生き方、生きてきた様
子がほんのり浮かびあがってくるものでした。 最後の19人目[青玄さん]は主人公と
みました。なるほどなるほど。
 60代は、評者にとって目前の世代です。未経験の時ですが、両親のそれと重ね、これ
また不思議とかれらのその時代の様子がはっきりと浮かびあがります。参加できませんで
したが、つい最近、高校時代の仲間が集まった時のことを出席した友人が長々と電話で話
してくれたこととも重なります。「一人で100件以上の学生の住まいをメンテして200%
の仕事をしているというのに、60過ぎたら契約社員、同じ仕事をしても給料は半分、こ
れって何?」「○○さん前歯二本インプラント。 △△さんは奥歯にブリッジかけてそれ
が合わなくて悩みっぱなし」。  みんなの様子も、報告してきてくれた友人の話しぶり
も高校生の時と同じでした。それでも気が付けばも私も仲間も、もう少しで60代。作品
の中のOB会の雰囲気が友人の話と重なります。

 60代の青玄さん、年はとってもその名前のとおり青い、心が青い。 青いというのは
まんまるの目を開いてそのまんまを視られるということです。だから一見平凡極まる小さ
なことにでもその厚みや動きを観察することができるのです。
 「普通の事柄を”余計なもので無く”書けるのは腕前です」と森下さんが書いていおら
れましたが、青いから、日常の出来事の余計なものとして見すごされるようなものの中に
煌めきの様なものを見つけ、それをすくい上げて素直に表現することができるのでしょう。
  おわり
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