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☆☆☆☆☆ 同 人 α ☆☆☆☆☆ - ニューロン・カフェ

2408万理久利:2012/10/14(日) 13:46:22
「シリーズ・歪んだ風景−鐵橋 第一回」評の2
ホームに佇むその瞬間に駆け巡る過去と現在、それを引き寄せたのが汽車の音と渡ってき
た川にかかる鐵橋です。評者もその音と景色に入り込み自分の過去の景色とつい重ね合わ
せました。

<蒸気機関車>
 冒頭に出てくる回想場面、汽車の音・姿、線路、駅回りのざわめき、このあたりの表現
がうまい。記念・観光物やミニチュアの世界ではなく、運送の先頭にあった生の機関車の
時代を知らない読者も十分想像を膨らませるかと思います。場面はかつて主人公が生活し
ていた頃、まさしく機関車が先頭を走っていた時代、住まいの近くにあった駅、汽車の様
子ですがそれがなぜか主人公がいる「今」とぴったりと重なっている不思議さがあります。
不思議と書きましたが、よく読むと少しも不思議とは感じさせないものがあります。
 そして次の章でホームにいる「今」の主人公に場面が移り決して不思議ではないという
ことの裏打ちをする箇所があります。一瞬のうちに時間が縮み(歪み)過去と今が重なる
ことをマクダガートの「時間論」で取り上げています。A系列=現在の視点に依存する主
観的な時間、この中では時間の配列など関係ないようです。


<二筋の川と二つの鐵橋>
 ホームにたどり着く前に通った鐵橋から、過去が現在に押し寄せてきます。この時から
時間の移動は始まっているのです。対照的な二本の川が交わりそこにある鐵橋は主人公に
とって「意識の結界」であり、列車に運ばれ通り抜ける時に別な空間、時間に入っていく、
その様子がXY軸の交わり、数式など作者らしい視点からの表現も加わりよく想像できま
す。ただどんな配置で二つの川が流れ、交わり、そして鐵橋がかかっているのか、登りと
下りなのか、二つの鐵橋はどれくらい離れているのか、絵としてははっきりと浮かんでき
ません。少し触れてもらいたいところです。さて、この川と鐵橋は現実としても心象風景
としても「結界」にふさわしい雰囲気を漂わせているようです。二筋の川の表現はここに
もっていくためのものでしょう。さらに主人公に[呪文]を唱えさせるところは秀逸です。

 過去の世界は閉鎖的で、一方安心、平穏を得られる場所であったようです。平穏を守る
ために閉鎖的になりかつ時として外からのものに暴力的になる。安心を捨て、自由を求め
て主人公は鐵橋を渡って故郷を離れたのかもしれません。
ところが数十年たっても鐵橋を渡ると過去、別な時空に引き戻されるのです。

 「自ずと私達は空白の時間でも繋がっていたのではないだろうか」引用
プラットホームで見かける人に昔の面影を感じ、鐵橋の[内側]にいる彼等もまた[外側]
に行った主人公とともに同じ時間を生き、[外側]の生活を選んだ主人公もまた[内側]
の彼等とともに生きてきたのだと主人公が気付く中に、時空を越えた故郷をめぐる人間の
魂の揺らぎ、「一瞬の長旅」のようなものが感じられました。作品は短くて長い(深い)
ものに仕上がっています。
??????つづく
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