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☆☆☆☆☆ 同 人 α ☆☆☆☆☆ - ニューロン・カフェ

1451赤松次郎:2011/06/19(日) 08:00:43
天使ごっこ・悪魔ごっこ(6)六月の感想−3
この題名での物語がまだ完結していないうちに、こういうことを書くのはちょっと差し障り
があると思ったが、取り繕ってありきたりの賛同で評することでなく、敢えて問題提起して
みよう。このことは作者と私の感覚や意図の違いは大いにあると思うから、まったく個人的
な意見として読んで滅入らないで欲しい。
それは第1回から第3回までの表現のしかたと、その後のそれが違うのではないかと感じら
れるということである。

第1回
<わが青春の墓標>
 日比谷でおりて、階段を上り地上にでると一気に視界が開けた。公園の門のどまん前だ。
 「あれ、ここどこかな。ひょっとしてあそこじゃない?」私がつぶやくと天使君が大きな
 声で「そうや、君が来たかった所や」私より感動して答えた。私もそれに合わせて大きな
 声で「やっと見つけられたね」と叫んだ。真っ青な空、都会の真ん中というのに車は少な
 い。そうか、今日は休日だったんだ。

第2回
<宇宙の嵐>
 朝から風が吹きまくっていた。五月の嵐だろうか。風は夜まで吹き続け、ベッドの中でう
 とうとしていた私はそれが宇宙嵐のように思えた。右手を伸ばし小窓を少し開けてみると
 ヒューヒューと語り掛けるように一斉に冷たい空気が顔に吹き付けてきた。吹きつけるだ
 けでなく、掬い上げ、巻き上げる竜巻のようであった。
 渦に巻き込まれたのか、気がつくと私は宇宙空間に漂う「何か」になっていた。生まれる
 前に居た場所なのだろうか。とてつもなく深い青、そして暗い世界だった。「体」は存在
 せずフワフワと浮遊している。何て軽いのだろう、何て楽なのだろう。何一つ悩むことな
 どないのだ。生まれる前に戻っただけなのだと思った。

第3回
<堕天使とアリス>
 天使君がつぶやいた。「君は堕天使にならないように」。堕天使は悪魔と同じ意味なのだ
 そうだ。天使の身でありながら、神に反逆し天界から追放され悪魔となる。反逆の理由は
 高慢、嫉妬、意志、もろもろの心境が天使にあったらしい。少し人間らしいと思った。彼
 にとって私は天使なのだろうか。堕天使とは意味深な言葉だ。よくわからないけれど、私
 は少しずつ堕天使になってきているような気がした。

第1回から第3回までの作風は、主人公は時々現実と想念の世界を交互に行き来するよう
な、まるで重力を断ち切り空間に自由に浮いているような、不思議な浮遊感を感じさせたも
のだ。天使君は主人公にだけしか見えないもののような、主人公の想念のなかにだけ存在す
るように感じさせるのである。なぜなら天使君が他の人との接触を見たことないし、その容
貌は読者が思い描けるような具体的な記述は一切無いからだ。
私は天使君も悪魔君も主人公の中の想念の中だけの存在で、その考えや思いを現実に行為す
るのは主人公だと思っていた。

このように見てみると、第3回以降では主人公が学生生活を終え社会に出て行くようになっ
てから、現実の世界のみの記述で天使君や悪魔君の明確な表現がなく、出番はほとんどなく
なったといっていいだろう。
私はこの小説の善し悪しを言っているのではない。ただ前編の物語の感性や表現手法は作者
でなければ書けない、独特の個性と才能を感じたものだ。沢山の物書きはいるが、その人に
しかできない言葉や表現を会得している人は少ない。私は万理久利さんが創る夢か現の混
じった渾沌の世界を描くという能力、人とまったく違う素晴らしい才能の片鱗を高く買って
いるものである。だから今回の「天使ごっこ・悪魔ごっこ」の物語、異質な世界を忘れない
でもらいたい。後半の描き方は現実的でそれなりに上手だが、前般の物語と後半のそれは別
の物として創った方がよかったのではないか。人と同じ感性の物をいくら書いてもつまらな
いし、せっかく万理久利さんしか持っていない独特の個性を、世俗に塗れさせて失ってしま
うことを恐れるものである。これは杞憂にすぎないことかもしれない。これからの物語の行
方に注文をつけた格好になったことかも知れない。だとすればやはり完結をもって評すべき
だったか。   おわり

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