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Japanese Medieval History and Literature

7415鈴木小太郎:2022/03/12(土) 15:29:29
『とはずがたり』の政治的意味(その3)
昨日は久しぶりに外村久江氏の『鎌倉文化の研究─早歌創造をめぐって─』(三弥井書店、1996)を読み直してみたのですが、国文学と歴史学の境界領域に国文学の側から踏み込んだ画期的業績という点では、同書は小川剛生氏の『兼好法師 徒然草に記されなかった真実』(中公新書、2017)に先行する名著ですね。
外村久江氏は1911年生まれで、リンク先ブログには、

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国文学者。(1911年ー1994年8月6日)
函館市生まれ。1934年東京高等女子師範学校文科卒、1941年東京文理科大学国史学科卒。東京学芸大学助教授、教授、75年定年退官、名誉教授。1993年度志田延義賞を養女・外村南都子との共著『早歌全詞集』で受賞。

https://d.hatena.ne.jp/keyword/%E5%A4%96%E6%9D%91%E4%B9%85%E6%B1%9F

とあります。
『鎌倉文化の研究』の奥付には何故か没年が記されていませんが、外村南都子氏の「あとがき」によれば、

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 本書は、故外村久江(養母、叔母)の鎌倉文化に関する論文のうち、前著『早歌の研究』(至文堂 昭和四十年)の前後に発表された主な論文を集めたものである。
 論文の選択と構成・配列、書名・篇名の決定、序説・結語などの執筆と追加、内容の訂正・加筆(大体、字句の訂正や不明だった点の後の解明による訂正にとどまる)は、生前、本人によって行われた。長年にわたる発表のため、論文によって表記・文体に変化があり、少しでも読みやすくしたいという意向にしたがって、表記や表現の一部を、最近発表のものになるべく統一するように改めた。また、引用の早歌の詞章や秘伝書の本文、加注、原論文の明らかな誤植の訂正なども、主として私が行なった。
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とのことで(p505)、1994年没で間違いないのでしょうね。
同書で「白拍子号三条」について考察された「第四章 早歌の撰集について−撰要目録巻の伝本を中心に」などは1967年の論文ですから、実に半世紀以上前の業績です。

http://web.archive.org/web/20150918011404/http://www015.upp.so-net.ne.jp/gofukakusa/just-tonomura-hisae-shirabyoshisanjo.htm

しかし、歴史学界と切り離された独自の小宇宙に住む国文学村の普通の住民と違って、外村氏は本当に幅広く歴史学の文献を読み込まれている方で、今読んでもさほど古さを感じさせません。
そして歴史学研究者で早歌の分析に取り組んでいる人は皆無(?)なので、結局、今でも早歌に関しては外村氏の研究が最高水準を維持していることになりますね。
さて、早歌は鎌倉で生まれた武家社会の芸能で、明空(月江)という人物が創始者であり、かつ大成者です。
明空の出自は不明ですが、生年はおよそ寛元三年(1245)前後と推定されています。
そして、明空が正安三年(1301)に執筆した『撰要目録』という早歌の曲名、作詞・作曲者リストの序文には、

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  序

 夫れ当堂の郢曲は、幼童の口にすさみ、万人の耳にさへぎるたぐひ、様々多しと雖も、愚老が撰び集むる曲、すべて其軸十巻を定め、其歌百の数を究む。この内二十余首は愚作の外なり。即ち其作者の名字をたどるたどる記す。これ或は貴命により、或はうたた聞き及ぶ所、耳に留り、故ある品を先として都鄙の玩び、巷の説をも嫌はざれば、定めて誤りもあり、本説もおぼつかなく、浮ける事多くして、後のそしりのがれ難かるべし。況や自ら求め、外を伺はざれば、はかなき筆の迷ひ愚かにして、猶拙き余りあるべき物なり。ただ老耄鳩杖のたづき無く、幼稚竹馬のいとけなきを知らせんためなれば、むねむねしく言ひたつるに及ぶべからず。然かあれば、わきて句をととのへ、詞を飾らず、戯のすさみ、寝覚の独り言などを、誰漏らしけむと、かつはかくまめだち取りなす所をさへ、皆うけひかずやと、憚り無きにしもあらねども、ひたすら我好ける道に、誹りを忘るるは、愚かなる身にも限らざるかと、思許すも、やがて老の僻みにやあらむ。

https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/ff69e365c35e0732e224f451e70fbc8f

と記されています。

>筆綾丸さん
レスはのちほど。




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