したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。

Japanese Medieval History and Literature

7413鈴木小太郎:2022/03/10(木) 13:58:55
『とはずがたり』の政治的意味(その2)
「2022共通テスト古文問題の受験レベルを超えた解説(その7)」の後、筆綾丸さんの投稿に金沢貞顕が出て来たことをきっかけとして、2月7日に私は突如として、

『とはずがたり』の政治的意味(その1)
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/8bb6604fe41c778bbff02b322540603e

という投稿をしてしまったのですが、共通テスト以降に当掲示板に来られた人にとっては訳が分からない展開だったはずです。
しかし、「2022共通テスト古文問題の受験レベルを超えた解説」シリーズ全20回、田渕句美子氏「宮廷女房文学としての『とはずがたり』」シリーズ全9回プラス補遺2回、更に「若い世代向けの『とはずがたり』参考文献」シリーズ全4回プラス補遺1回を読まれた方には、上記投稿で金沢貞顕の周辺を探った私の意図も理解していただけるのではないかと思います。
とにかく『とはずがたり』だけを扱っていたのでは、一体どこまでが事実に基づいていて、どこからが虚構の世界のなのかの見極めは原理的に不可能です。
『とはずがたり』研究が検証可能な、客観性のある学問であるためには、『とはずがたり』という作品の内部ではなく、二条が『とはずがたり』の外部の現実世界に残した痕跡を調査する必要がありますが、私はそれが鎌倉で流行した早歌という芸能であり、「源氏」「源氏恋」の作者である「白拍子三条」は二条の隠名であろうと考えています。

田渕句美子氏の方法論的限界
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/e561cd5f2b6ad2e0750379f3cfb62e71

先に外村久江氏の「増鏡にはこの二条が後に三条と改名させられていることがあって(山岸徳平氏『とはずがたり』解題)、白拍子ではないが、同じ三条であることは不思議な符合である」(『鎌倉文化の研究』、p292)という文章を紹介しましたが、外村氏はこれに続けて、

-------
この作者は女西行を理想として、各地を旅行したが、鎌倉にも来て、平頼綱入道の奥方の為に五衣の調製の指導をしたり、新将軍久明親王の為の御所のしつらいの助言等をしている。その際は身分や名を秘し、ただ京の人といって出かけている。鎌倉入りは既に尼となった正応二年(一二八九)の事で、早歌の最初の撰集時期と重なっている。早歌には生みの親とも考えられる明空は極楽寺の僧侶ではなかったかとみられるが、彼女の鎌倉入りはこの寺に真っ先に入って、僧の振る舞いが都に違わず、懐かしいという感想を述べている。以上のことや音楽・文学の才能の点から、或女房としてはふさわしい人のようであるが、口伝の白拍子号三条の朱書きとどう結びつけるかが難しい。白拍子にも高貴にはべって才能の豊かな人もいた時代だから、今は朱書きを信ずることにしておきたい。

https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/668f1f4baea5d6089af399e18d5e38c5

と書かれています。
「白拍子三条」が作詞作曲した「源氏恋」は次のような作品ですが(『日本古典文学大系44 中世近世歌謡集』、岩波書店、1959、p73以下)、早大本にだけ「或女房」の横に「白拍子号三条」の朱書があります。

-------
源氏恋(げんじのこひ)

好しとても善き名も立たず 苅萱のやいざ乱れなん しどろもどろに藤壺の 何(いか)なる迷ひ成りけん 浮き名も消えなで薄雲の 浮き立つ思ひの果(はて)よさは 立ち舞ふべくもあらぬ身の 紅葉の賀の夕ばへに 頭の中将の匂ひも 人より異(こと)に見ゆれども 花の傍(かたはら)の深山木(みやまぎ)と押されしも さすがにいかが思(おぼ)しけん 袖うち振りし御返し 起居(たちゐ)につけて憐と 詠ませ給ひけんもわりなし 此(この)朧月夜の内侍の督(かみ)や さりや何(いづれ)に落ちけん 涙の色ぞおぼつかなと 疑はせ給ひたりけん 朱雀院(しゆざくゐん)の問ひし御(おん)心 恥ぢてもいかが恥ぢざらむ 女三(によさん)の宮の柏木も 薫の行末(ゆくへ)と思へば 更に疎(うと)みも終(は)てられざりけり 浮舟の匂兵部卿(にほふひやうぶきやう)の宮 橘の小島が崎に 船指し留めて契りけん 河より遠(をち)の御(おん)住まひ いと浅からずとや覚ゆる

https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/a90346dc2c7ee0c0f135698d3b3a58fd

また、「源氏」は六条院の女楽をテーマとする作品であり(日本古典文学大系44 中世近世歌謡集』、p79以下)、『とはずがたり』の「女楽事件」を連想させます。
こちらも早大本にだけ「或女房」の横に「白拍子号三条」の朱書があります。

-------
源氏

藻塩草書き集めたる其の中に 紫式部が筆の跡 疎(おろそ)かなるは無しやな 六条の院の女楽(をんながく) 伝へて聞くも面白や 比(ころ)は正月(むつき)の廿日(はつか)の空 咲(をか)しき程に成り行くに 御前(おんまへ)の梅も盛りに 大方の花の木どもも 皆(みな)気色ばみ霞み渡れるに 伏待(ふしまち)の月差し出でて 先づ女(によ)三の宮を見奉れば 人より殊に小くて 桜の細長(ほそなが)に 柳の糸の様(さま)したる 御髪(みぐし)は溢(こぼ)れ懸りて 琴(きん)弾き給ふ御(おん)姿 鶯の木(こ)伝ふ羽風にも 乱れぬべくぞ覚ゆる 女御の君は今少し 匂ひ加はれる様して 箏(しやうのこと)をぞ弄(まさぐ)り給ひし 咲(さ)き溢(こぼ)れたる藤の側(かたはら) 双(ならび)無き朝ぼらけを見る心地す 紫の上は葡萄染(えびぞめ)にや 色濃き小袿(こうちぎ)に 蘇芳(すはう)の細長をぞ着給ふ いと声花(はなやか)に和琴(わごん)を 気高くこそは掻き立つれ 花と言へば桜に喩(たと)へても 猶物より異(こと)に見ゆるに 並(な)べてにはあらぬ御(おん)辺(あた)りに 明石は気押(けおさ)るべけれども いとさしも非ず玩(もてな)して 高麗(こま)の青地の錦の 端(はし)刺したる茵(しとね)に 琵琶を打ち置きて唯(ただ)けしきばかり引き懸けて たをやかにつかひなしたる撥(ばち)のもてなし 五月(さつき)待つ花橘の花も実も 共に押し折りたる喩へは 何(いづ)れにもいかが下されむ
-------

>キラーカーンさん
>筆綾丸さん
過去投稿は保管場所を一応確保しているので、若干の手間はかかるものの、そちらに移せばよいだけなのですが、問題は今後ですね。
長年使い慣れた掲示板という形式には愛着があり、他の掲示板運営業者に引っ越すというのが一番良い選択肢かと思うのですが、全体的に先細りの傾向は否めないので、引っ越した先でまたまた終了という懸念もありますからねー。




掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板