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Japanese Medieval History and Literature

7403鈴木小太郎:2022/03/03(木) 11:14:02
若い世代向けの『とはずがたり』参考文献(その1)
今年の共通テストを受験したような世代を含め、若手の歴史研究者を一応の読者として想定した上で、『とはずがたり』の参考文献のうち、それなりに特徴のあるものを少し紹介しておこうと思います。

参考文献:『とはずがたり』
http://web.archive.org/web/20150905121827/http://www015.upp.so-net.ne.jp/gofukakusa/sankobunken-towa.htm

まず、『とはずがたり』の位置づけ、特に『増鏡』との関係については、1938年(昭和13)に宮内省図書寮で『とはずがたり』を「発見」した山岸徳平博士の「とはずがたり覚書」(『国語と国文学』17巻9号、1940)は必読です。
八十年以上前の論文ですが、実に的確にポイントを押さえていますね。

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 最後に、増鏡と「とはずがたり」との関係を掲げておく。増鏡は、多く既製作品を利用したらしく、新島守の巻には遠島御百首などを襲用して居る事は、既に知られた所である。然るに「とはずがたり」との比較によると、余りにもその襲用の仕方が露骨であるのに驚く。けれども亦、前述の如く、それが却つて増鏡作者に就いて、何等かの暗示を与へる様な気もするのである。

http://web.archive.org/web/20150909232006/http://www015.upp.so-net.ne.jp/gofukakusa/yamagishi-tokuhei-towa-oboegaki.htm

といった感想も含蓄があります。
また、エッセイですが、同じく山岸徳平の「『とはずがたり』の思出」(日本古典全書『とはずがたり』月報、1966)も、桂宮本刊行時の事情などが伺えて興味深いですね。

http://www015.upp.so-net.ne.jp/gofukakusa/yamagishi-tokuhei-towa-omoide.htm

国文学界で『とはずがたり』研究が一大ブームとなった後、その牽引役の一人であった松本寧至氏が一般向けに纏めた『中世宮廷女性の日記』(中公新書、1986)は、全体の内容を概観するには便利ですね。

http://web.archive.org/web/20061006211407/http://www015.upp.so-net.ne.jp/gofukakusa/matumoto-mokuji.htm

松村雄二氏の『『とはずがたり』のなかの中世 ある尼僧の自叙伝』(臨川書店、1999)もよく纏まっています。
リンク先では引用しませんでしたが、伝本の由来などの書誌的事項が詳しいですね。

http://web.archive.org/web/20061006211155/http://www015.upp.so-net.ne.jp/gofukakusa/matumura-yuji-binran.htm

注釈書としては、三角洋一氏の『新日本古典文学大系50 とはずがたり・たまきはる』(岩波書店、1994)は注記が詳細ではあるものの、いささか読みづらく、初心者には福田秀一氏の『新潮日本古典集成 とはずがたり』(新潮社、1978)の方がよさそうです。
もっとも、その「解説」は冒頭に、

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一般に、男性は同時に複数の女性に愛情を抱くことができるが、女性はただ一人の男性との変らぬ愛情を求める傾向にあり、複数の男性を同時に愛することはできないと言われる。

http://web.archive.org/web/20061006205341/http://www015.upp.so-net.ne.jp/gofukakusa/just-fukudahideichi-kotenshusei.htm

とあるなど、ちょっと変なところもありますが。
現代語訳は冨倉徳次郎氏の『とはずがたり』(筑摩叢書、1969)が最初ですが、訳文が若干古風な上に、細かい活字が詰まっていて読みづらいですね。
旧サイトでは、私は次田香澄氏の講談社学術文庫版『とはずがたり.全訳注(上)(下)』(1987)を大いに活用させてもらいましたが、久保田淳氏の『新編日本古典文学全集47 建礼門院右京大夫集 とはずがたり』(小学館、1999)も良いですね。

http://web.archive.org/web/20150516032839/http://www015.upp.so-net.ne.jp/gofukakusa/genbun-towa-index.htm

以上、国文学者の業績を紹介してきましたが、歴史学者も本当に多くの人が『とはずがたり』に言及していて、その内容は玉石混淆です。
比較的早い段階で『とはずがたり』に注目したのは網野善彦氏で、『日本の歴史10 蒙古襲来』(小学館、1974)には二箇所、『とはずがたり』の相当長い紹介があります。
また、『中世の非人と遊女』(明石書店、1994)などでも網野氏は後深草院二条を論じておられますが、正直、私は網野氏の見解にはあまり賛成できないですね。

網野善彦「得宗御内人の専権」
http://web.archive.org/web/20061006211202/http://www015.upp.so-net.ne.jp/gofukakusa/amino-yoshihiko-tokusou-miuchibito.htm
網野善彦「中世における女性の旅」
http://web.archive.org/web/20150506024940/http://www015.upp.so-net.ne.jp/gofukakusa/just-amino-chuseiniokeru-joseino-tabi.htm

>筆綾丸さん
>來宿于石禾御厨之處

頼朝と武田信義の関係については、私は呉座勇一氏の『頼朝と義時』の説明にけっこう納得したのですが、大河ドラマの進展に応じて、呉座氏が講談社のサイトで追加的な解説をしてくれそうですね。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/92571




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