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Japanese Medieval History and Literature
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「被害者としての女性史」の限界
1997年に開設し、2015年まで存続していた私の旧サイト「後深草院二条─中世の最も知的で魅力的な悪女について」は、今は「インターネット・アーカイブ」で読むことができます。
http://web.archive.org/web/20150830085744/http://www015.upp.so-net.ne.jp/gofukakusa/
『とはずがたり』関係の参考文献は2001年までに収集したものなので、約二十年前の研究状況が凍結保存されている形ですが、今回、早稲田大学教授・田渕句美子氏の「宮廷女房文学としての『とはずがたり』」(『歴史評論』850号、2021)で最近の研究状況を確認したところ、率直に言ってあまり進展はないですね。
参考文献:『とはずがたり』
http://web.archive.org/web/20150905121827/http://www015.upp.so-net.ne.jp/gofukakusa/sankobunken-towa.htm
私にとって全くの新知識は、「物語との近接では、たとえば『小夜衣』は『とはずがたり』と共通する表現を多数有しており、『小夜衣』の作者は雅忠女かという説もある」(p45)との指摘くらいで、注を見ると、これは梅野きみ子氏「『小夜衣』の成立とその作者像─『とはずがたり』に注目して」(『小夜衣全釈 研究・資料編』風間書房、2001)という論文だそうです。
『小夜衣』は名前すら知らなかったので、少し調べてみようと思います。
『小夜衣全釈 研究・資料篇』
https://www.kazamashobo.co.jp/products/detail.php?product_id=193
ところで、田渕氏は「五 君寵と女房」において、
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『とはずがたり』がどれほど物語的に、時には虚構を綯い交ぜにして描かれようとも、その中心を貫くのは、雅忠女のこうした無念さ、それにつきるように思う。そしてそれは、院などの権力者に一時は寵幸されても、やがては寵愛を失った後を生きねばならない、当時の無数の宮廷女房たちの悲哀を象徴する言でもあると思われる。
https://6925.teacup.com/kabura/bbs/11188
と書かれていますが(p49)、結局は二条は「被害者」なのだ、『とはずがたり』は「当時の無数の宮廷女房たちの悲哀を象徴する」悲劇なのだ、という思い込みが田渕氏の限界であり、そして『とはずがたり』を扱う国文学研究者の共通の限界なのかなと私は感じます。
更にそれはフェミニズム的な「被害者としての女性史」の限界でもありますが、『とはずがたり』は本当に悲劇なのかを正面から問うことによって「被害者としての女性史」の限界を突破し、「加害者としての女性史」を開拓することができるのではないか、というのが私の展望です。
>筆綾丸さん
>『とはずがたり』より百年以上前に、『とりかへばや物語』という、すこぶる変態的な作品が書かれていて、この物語に関する著書もある河合隼雄氏
旧サイトでも河合隼雄・富岡多恵子氏の対談「キャリアウーマンの自己主張」(『物語をものがたる−河合隼雄対談集』、小学館、1994)を載せておきました。
http://web.archive.org/web/20100829220906/http://www015.upp.so-net.ne.jp/gofukakusa/just-kawaihayao-monogatariwo-monogataru.htm
『とはずがたり』の基本的性格について、河合氏は「この物語は虚構も入っているけれども、そうとう事実を書いて」いるという立場で、富岡氏も「事実をベースにしていると思います、ほとんど」と同意していますね。
河合氏がそのように考える根拠は明確ではありませんが、「嵯峨の離宮で、後深草院と弟の亀山院と二条の三人で二夜を過ごす話」や「伏見の離宮で、五十男の近衛大殿と関係させられ」る話などに興奮している様子を見ると、結局はエロ話の「リアル」さに魂を奪われてしまった、ということだろうと思います。
河合氏も「赤裸々莫迦」タイプ、即ち作中の出来事が変態的であればあるほど、登場人物が変質者であればあるほど、作者の描写が赤裸々であればあるほど「リアル」に感じる人の一人ですね。
『とはずがたり』の「証言内容はすこぶる信頼性が高い」(by 森茂暁)
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/8095
「赤裸々に告白した異色の日記」を信じる歴史学者
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/8097
『とはずがたり』の何が歴史学者を狂わせるのか。
https://6925.teacup.com/kabura/bbs/9154
「有明の月」考(その5)─「赤裸々莫迦」タイプではない次田香澄氏
https://6925.teacup.com/kabura/bbs/9488
『とはずがたり』の妄想誘発力
https://6925.teacup.com/kabura/bbs/9869
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