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Japanese Medieval History and Literature

13筆綾丸:2007/06/05(火) 20:44:45
デカルトと古文書
小太郎さん
有明の月のモデルですか・・・。
『源氏物語』柏木巻に、女三宮と柏木が取り交わす歌があり、これが最後となり、柏木は
恋煩いで死にます。二条と有明の月が取り交わす歌があり、え、嘘だろ、と思ううちに、
有明の月が流行病で死にます。

たちそひて消えやしなまし憂きことを 思ひ乱るる煙くらべに   女三宮
行くへなき空の煙となりぬとも 思ふあたりを立ちは離れじ    柏木

身はかくて思ひ消えなん煙だに そなたの空に靡きだにせば    有明の月
思ひ消えん煙の末をそれとだに ながらえばこそ跡をだにみめ   二条

両者はとてもよく似ていて、『とはずかたり』の作者が、柏木のパロディとして有明
の月を書いているのは、ほぼ確かのような気がします。
柏木の女三宮への発作的な恋と有明の月の二条への発作的な恋もよく似ていますし、
さらには、柏木の死後に女三宮が柏木の子を産むのと有明の月の死後に二条が有明の
月の子を産むのも、よく似ています。
『とはずかたり』の作者が、我が身を二品内親王(女三宮)になずらえている風情は
全くありませんが、『源氏物語』の真似は、ほぼ確実のようです。有明の月のモデル
は柏木と思われますので、某女流作家のように、有明の月の性格分析などしても、
ピントがずれてるぜ、という感じですね。
ただ、柏木は藤原摂関家の御曹司という設定ですので、有明の月も同じ階級の出身だ、
というような含みがあって、このへんが、一筋縄ではゆかぬ作者ですね。

伊木壽一著『増訂日本古文書学』(昭和51年 雄山閣出版)を読んでいましたら、、
「ベネディクト派の僧侶達はマビヨン(*)を本として、神学・文学・法律学等に関する
文書を多く出版し、かの高僧伝の編纂所であったパリのサン・ジェルマン・デ・プレー St.Germain des Pres の僧院は学問の淵叢たるとともに古書学 Paleographie および
古文書学 Diplomatique の学生養成所でもあったのである」(同書17頁)
とあり、デカルトの眠るあの教会は古文書と関係が深かったのか、とびっくりしました。

*ドン・ジュアン・マビヨン Dom Jean Mabillon(1632ー1707)。古文書学の不朽の大著
デ・レ・ディプロマチカ De re diplomatica 六巻の著者。




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