第三章では、これらの細胞の分化能をin vitro, in vivoの双方で調査した。ES細胞から三胚葉由来の細胞へ分化させるための培養条件を参考に、培養条件を設定し分化誘導実験を行った。その結果、sphere由来の細胞は神経・筋肉・肝実質細胞などの代表的な三胚葉由来組織細胞へ分化できることが確認された。生体内での分化能と増殖能を検討するために移植実験を行った。Sphereの細胞はPGA上に播種され、2-3日PGA(poliglycolic acid)上に細胞を接着させるために培養した後、NOD/SCIDマウスの皮下に移植した。4-6週間後に移植片を採取し、組織学的、免疫組織化学的に解析を行った。移植後直径3mmほどのカプセル化した塊を形成した。内部には上皮、神経、筋肉、管といった三胚葉由来すべての組織形成が確認された。以上の結果から、粉砕処理後にsphereを形成する細胞は、無血清条件下で培養すると、非常に幼弱なタンパク質・遺伝子を発現し、培養系、生体内双方において三胚葉系由来組織への分化能を有することが示された。