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スラム街生まれのSさんの話
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:
不思議な名無しさん
:2014/12/24(水) 00:49:40 ID:tG/1WxQs0
数年前、俺はアメリカへ旅行に行った。遠い異国の地でその国の文化に触れ、滞在して数日で俺はすっかり魅了されていた。
入国から一週間ほど経った頃。デトロイトで観光していた俺は、ダウンタウンである黒人男性に突然話しかけられた。
「あなたもスリですか?」
俺は困惑した。スリ犯と間違われる程俺の風貌は怪しいのであろうか。俺は「いえ、違います...」と言い、その場を去ろうとした。しかしその男性はついてくる。
「あなた、スリやらないんですか...」
この時、俺は既に異変に気が付いていた。何かがおかしい。その声は明らかに下から聞こえていた。
「スリしましょうよ、あなたも...」
俺は冷や汗をかきながらも、恐る恐る下を見た。そこには、さっきの男性の死体があった。男は「スリラー」ではなく"Thriller"だったのだ。
「Thrillしよう...一緒にThrillしよう」と無数のゾンビが俺に囁いている。俺は俺の人生が今日、終焉を迎えることを悟り、ゆっくりと瞼を閉じた。
「そこまでだ!」
突然、張りのある声が一帯の陰気な雰囲気を吹き飛ばした。聞き覚えのある声、それはスラム街生まれのSさんだった。Sさんは、ゾンビによって今にもスリラーへと変異させられそうな俺の前に立つ。
すると、一体のゾンビが「あなた、一緒にThrillしませんか?」とSさんに話しかけた。
"Huh?"
Sさんはそう言うと自慢の自前の竿を振りかざし始めた。やがて竿は眩い光を放ち、糸状の何かが剣のように次々とゾンビを切り裂いてゆく。ほとんどのゾンビが死滅した時、地面に這い蹲る一体の虫の息のゾンビが声を発した。
「一緒に...Thrill...したかった...」
HeartlessなSさんはBrokenheartのゾンビにトドメを刺すようにして言った。
"Huh? I can't hear you."
俺がはっとして我に返ると、ゾンビは全滅していた。
「Sさんもスリはしないんですね」
俺がそう尋ねるとSさんはポケットからコンドームを取り出して言った。
「003はするけどね」
ロングスリーブとコンドームはスリーシーズン着られる、と言って笑みを浮かべるSさんを見て、スラム街生まれは凄いと改めて感じた。
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