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【つのだじろうのうしろの百太郎】守護霊との交信を試した結果
1
:
T
:2014/09/27(土) 20:50:54 ID:zzIpvbeg0
これは私がまだ小学校6年生の頃のお話。
当時つのだじろう先生の心霊漫画『うしろの百太郎』に夢中だった私。
他にも『恐怖新聞』や『学園七不思議』など、とにかくホラー漫画を求めては読み漁った。
まだファミコンすら登場する前の時代である。
夜になってなかなか寝付けない時は、退屈でしょうがない。
時計を見ると夜の1時過ぎ…、家族も寝静まったし、
『うしろの百太郎』にあった守護霊との交信とやらをやってみようかな。
私は懐中電灯をつけ、漫画に載っていた方法をもう一度じっくり見てみる事にした。
2
:
T
:2014/09/27(土) 20:55:46 ID:6q37qYH.0
まず風呂に入り、身体をよく洗う。
最後に冷水をかぶり、身を清める。
小学生だった私が水をかぶるという行為は、なかなか辛かった。
でも、こういうものは順序良くやらないと大変な目に遭うのでは?
という臆病さも持ち合わせていたので、ちゃんと水を身体へ掛ける。
家族を起こさぬよう静かに階段を上がり、自室へ戻った。
3
:
T
:2014/09/27(土) 21:05:37 ID:6q37qYH.0
ここで手短に部屋の状況を話すと、弟と共同部屋だったのでベッドは二段式で、
私は兄の特権を活かし1段目を使っている。
弟がスースー寝息を立てているのを確認すると、私はベッドへ仰向けに横たわり、
両手をへその上で輪を作るような形で組む。
この体制は霊を呼んでから帰るまで崩してはいけないらしい。
その状態にしてから「私の守護霊様、私の守護霊様…、いらっしゃったらどうか私の前に現れて下さい」。
この言葉を何度も心の中で強く願い、呟くのだ。
何度呟いただろう。
何の変化もない状況に段々飽きが来て、両手を離そうとした時だった。
4
:
T
:2014/09/27(土) 21:22:50 ID:6q37qYH.0
「……!」
動かそうとする手がまったく動かない。
私は焦りだし、他の部分を必死に動かそうとするも、全然駄目だった。
俗にいう金縛りってやつか?
初めての体験だったので、悲鳴を上げそうだ。しかし声すら出せない。
これまで霊というのものをこの目で見た事もないし、不思議な体験もない。
ただ心霊漫画が好きな小学生だった私。
遊び心の感覚と現実の怖さの違いを今知ったところで、手の打ちようがない状態。
どうしよう……。
本当にどうしよう……。
パニックに陥りそうになった瞬間、2段ベッドの天井の部分右上に、真っ黒で妙な空間のようなものが出現している事に気付く。
5
:
T
:2014/09/27(土) 22:18:04 ID:6q37qYH.0
(何だ、あれは……)
目だけが自由に動く状況下の中、私は辺りを見渡す。
天井に見える黒い空間以外はいつもの自分の部屋である。
その一画のみ、例えるならブラックホールのような現実の中でポッカリ開いた異世界の穴といった感じ。
しばらく一点だけを見つめる私。
すると穴から半透明のキツネみたいなものが出てきた。
6
:
不思議な名無しさん
:2014/09/28(日) 01:20:39 ID:S0p5eaTM0
盛り上がってまいりました!!
7
:
T
:2014/09/28(日) 03:17:59 ID:6q37qYH.0
(キツネ? こんなの絶対俺の守護霊じゃないだろ……)
コックリさんとかやると、よく低級霊や動物霊が来る事もあるという知識があったので、
私はこの半透明のキツネのようなものも、そういった類のものだと実感した。
もの凄い恐怖感が全身を包む。
身体のあちこちを全力で動かそうと必死にもがく。
すると右腕が不意に動き、ベッドの左側にある壁に勢いよくぶつかった。
「いってぇ〜……」
思わず声を出してしまうほどの痛み。
2段ベッドの上から弟がその音で「お兄ちゃんどうしたの?」と起きてしまったほどだった。
そうだ、肝心のキツネは?
辺りを丹念に見渡しても、日常の景色しか目に映らなかった。
8
:
T
:2014/09/28(日) 03:31:57 ID:6q37qYH.0
翌日になり、私はこの出来事を挿絵もつけ、詳しく手紙を書いてみた。
もちろんつのだじろう先生の漫画が掲載されていた講談社へ送る為である。
もし編集部やつのだ先生がこの自分の手紙を見て、どんな返事をくれるだろうか?
想像しただけでワクワクし、この事は誰にも話さず私だけの秘密にしとこうと思った。
返事が来たら、クラスで霊とか好きな友達に自慢げに見せ付けてやろうじゃないか。
しかし予想に反し、手紙を出して一週間ほど時間が過ぎ、未だ返信はなかった。
小学生の子供だから、手紙の内容を見たとしても信用してくれなかったのでは……。
ヤキモキした日々が続く。
とある日、真夜中に目を覚ました私。
トイレに行きたくなり、ベッドから起き上がる。
9
:
T
:2014/09/28(日) 03:44:41 ID:6q37qYH.0
窓の外から聞こえる雨の音。
結構な勢いで降っているようだ。
私は部屋から出て、すぐ左手にあるトイレへと向かう。
簡単な家の解説をすると、私の家は3階建てで、自分と弟の共同部屋は3階。
斜め向かいに空き部屋があり、私らの部屋の奥―――右手には叔母さんの住む部屋がある。
部屋の横にあるトイレの先は、踊り場のある鉄筋の階段になっているが、用を足した私は
どのぐらいのすごい降りなのだろうと、窓を開けて外の様子を確認しようとした。
その瞬間、妙なものが視界隅に映り、思わず私は左の階段方向を向く。
「ぅ……」
人間本当に驚いた時って、声が出ないものなんだ。
正確には声が出掛かって、喉の奥へ飲み込んだという表現のほうが正しいだろうか。
10
:
T
:2014/09/28(日) 03:52:57 ID:6q37qYH.0
2階へ行く階段の踊り場には普段使わなくなった木製の古い椅子が端に置いてあった。
そこに白い着物を着て、黒髪を下へ垂らすように俯いて座る女性の姿が見えたのだ。
しばらく私は凝視しつつ、その場で固まってしまった。
黒髪の女性は全身が何故かずぶ濡れで無言のままいる。
先日試した交霊方法で、変な霊でも呼んでしまったのだろうか……。
「ゴロゴロ…、ズガガガーンッ!!」
一瞬の稲光と共に、大きな雷音が鳴り響く。
自然と私の視線は窓のほうへ。
だけど横…、階段の踊り場には奇妙な女性がいる……。
恐る恐る私はその方向へ振り向いた。
11
:
不思議な名無しさん
:2014/09/28(日) 20:39:01 ID:uTW41S8U0
みてるよ
12
:
T
:2014/09/28(日) 21:44:13 ID:6q37qYH.0
(あれ? 誰もいない……)
何度も目を擦り、踊り場を見渡すも、古ぼけた木製の椅子しかなかった。
半分寝ぼけていたから目の錯覚だったのかな……。
それにしてもあんなハッキリ見えるものなんだろうか。
不可解な気分のまま、私は部屋に戻り再び寝付く事にした。
「……」
駄目だ、目が冴えてまったく眠くない。
少し整理してみよう。
先日やった交霊、この時身に起こったのは金縛り、妙な黒い空間。
それからキツネのような半透明のもの。
それらの出来事を手紙に書いて出したのが一週間前。
未だ返事はこない。
そして今のずぶ濡れの白い着物の女性……。
13
:
T
:2014/09/28(日) 21:52:38 ID:6q37qYH.0
約一週間ほどの間で、これだけの妙な事が起きた。
でも、それまでの生活では一切奇妙な出来事などなかった。
単なる気のせいなんじゃないか。
ここのところ恐怖系の漫画ばかり読み漁っていたから、変な想像力だけが豊かになっただけだ。
そう自分を納得させるよう努め、いつの間にか私は自然と眠りについていた。
14
:
T
:2014/09/28(日) 21:56:57 ID:6q37qYH.0
あれから一週間がまた過ぎた。
手紙の返事はまだない。
私は毎日100円のお小遣いを我慢して貯め、古本屋をうろついては値段の安いホラー系漫画を買った。
『恐怖新聞』、あと6巻だけ買えば全巻制覇だ。
『うしろの百太郎』、まだ半分も集めなきゃコンプリートできない。
学校の勉強もちゃんとしつつ、こんな感じで時間だけが過ぎていった。
15
:
T
:2014/09/28(日) 22:05:44 ID:6q37qYH.0
数ヶ月時が流れ、私は中学生になっていた。
この頃は空前のファミコンブームで、もちろん親にねだり家にもあった。
当然兄弟でコントローラーの取り合いになり、感情がエスカレートし過ぎて殴りあいにまで発展する事もあった。
それが原因か親から酷く怒られ、当分の間ゲームは禁止になってしまう。
駄目と禁止されると、どうしてもやりたくなるもの。
ただ、部屋にあったテレビ自体を取りあがられてしまったので、ファミコン本体だけではゲームのしようがない。
深夜家族が寝静まった頃、私は忍び足で廊下をゆっくり歩き、家の外へ出た。
学校帰り、電気屋の裏側に一台のテレビ捨ててあったのをチェックしていたのである。
あれはどう見ても捨ててあるものだ。
つまり自分があれを拾ったところで何の問題もないはずだ。
家から5分ぐらいの場所に電気屋があったので、人通りがいないのを確認すると、私はテレビを抱えそのまま持ち帰る事にした。
16
:
T
:2014/09/28(日) 22:50:26 ID:6q37qYH.0
部屋に戻ると寝ている弟を叩き起こし、テレビを2段ベッドの上に置き、ファミコンをセットしてみる。
「あれ、お兄ちゃん、画面白黒だよ?」
「馬鹿、大きな声出すなよ! バレたらすげー怒られるからな」
捨ててあったぐらいだから、このテレビは元々壊れているのだ。
私は翌日ハンダゴテを用意して、テレビの裏側にある配線の部分でコードが切れているところがないかチェックし、
多少適当だけど修理まがいの事をしてみた。
「おっ! ちゃんとカラーで映ってる映ってる」
人間その気で必死になれば、ある程度の事なら何とかなっちゃうもんなんだ。
私は妙な自信がついた。
ある日弟が面白いものを持ってくる。
手の平に納まる程度の布の袋だった。
「お兄ちゃん、ここ押してみてよ」
言われた通り袋を押すと、突然けたたましい笑い声がしばらく鳴り響く。
笑い袋だった。
しかし数日経つと、ただ笑い声だけ発する袋など興味はすぐ失せる。
捨てるのも何なので、2段ベッドの角に引っ掛けておいた。
17
:
T
:2014/09/28(日) 22:55:42 ID:6q37qYH.0
日曜日、2階にある父親の部屋で話をしながらテレビを見ていると、上から何か声が聞こえたような気がした。
耳を澄ましてテレビのボリュームを小さくしてみる。
(あれ? 叔母さんは出掛けているはずだし、3階には誰もいないのに何で声が聞こえるんだ?)
私は弟に「3階から何か声が聞こえない?」と訊ねてみる。
「あー、笑い袋の声だよ」
弟はつまらなそうに答える。
「え……」
誰もいないはずなのに、何で笑い袋が笑っているんだよ……。
まだ昼間だから泥棒がって事はないだろうけど、誰かが押さなきゃあの袋は声を出さない。
私は父親の部屋を出て、階段を駆け上がった。
18
:
不思議な名無しさん
:2014/09/29(月) 09:14:33 ID:uTW41S8U0
はたして、つのだ先生からお返事はくるのか
19
:
T
:2014/09/30(火) 20:18:00 ID:6q37qYH.0
3階の階段を上りきり廊下へ出ると、部屋から「ドカンッ! ボンッ!」といった何かの破裂音が聞こえる。
それと同時に聞こえる「わっはっは…」という笑い袋の声。
一体何が起きているのだろう?
そっとドアを開けると、爆発音と共に何かがこちらへ向かって飛んできた。
「あっちぃっ!」
頬に付着した何か、あまりの熱さで必死に手で拭う。
目の前には2段ベッドを中心に、大きな炎がメラメラと燃え盛っていた。
とりあえず私はトイレの洗面所へ行き、適当な入れ物を見つけ、水を入れる。
何で火事みたいになっているんだ?
まずは火を消さないと……。
20
:
T
:2014/09/30(火) 20:24:22 ID:6q37qYH.0
燃え盛る2段ベッドへ近づき、水の入った入れ物を掛けようとした。
その時また派手な爆発音と一緒に手首に暑い黒いものがへばりつく。
「あちゃーっ!!!」
思わず水ごと火の上に落としてしまうが、少量の水が掛かった程度ではまるで意味がない。
部屋の中はもの凄い量の煙と火に包まれていく。
その時父親が異常を察知したのか3階へ上がってきた。
「何だ、こりゃ」
部屋の中の状態を見るなり固まる父親。
しかしそれも数秒ですぐに「風呂場で布団を濡らせて持って来い」と指示を出す。
私は階段を駆け下り、父親の部屋にあった毛布を風呂場へ持って湯船につけた。
これごと多い被せれば、あの火も消えるのでは……。
3階の部屋に着くなり「うわ〜っ!」と声を張り上げながら、濡れた毛布を2段ベッドへ被せる。
「もっとだ! もっと持って来い!」
同じ作業を数回繰り返し、ようやく火は治まった。
21
:
T
:2014/09/30(火) 20:39:01 ID:6q37qYH.0
すごく大きな火事に思えたが、消化したあとの被害を見ると、2段ベッドの半焼に煙で真っ黒になった天井部分、
そして大切なファミコンとROMカセットの『燃えろ、プロ野球』が溶けていた。
このあと父親に何度もぶっ飛ばされたのは言うまでもない……。
陰でゲームをしていたという罪と、火事まで起こした罪で、私への監視は非常に強くなり、
おかげで勉強に打ち込む時間だけは増えた。
気分転換に漫画を読んでいるだけでも怒られたので、プライベート時間はほとんど勉強漬けの日々。
成績だけは良くなっていくが、内心複雑な気持ちだった。
ゲームをしたいのにまるで出来ない環境。
私はクラブを仮病で休み、ゲームセンターへ行くようになった。
家に帰る時間帯と、ジャージをわざと汚しておけば、バレずに済んだ。
そんな感じで私は中学校2年生を迎える。
22
:
T
:2014/09/30(火) 20:45:32 ID:6q37qYH.0
ある日、勉強机の引き出しを整理しようと中に入っているものをすべてテーブルの上に乗せた。
こうして見ると何気に無駄なものの多い事。
いらないもの、1年以上使っていないものなどはすべて捨てる事にした。
「ん? 何だ、これ」
一つの封筒が目につく。
宛名も何も書いていない。
中を開けると便箋が2枚入っている。
「……っ!」
パッと中身を見た瞬間、パニックに陥りそうになった。
何故ならば、以前守護霊との交信をしようとした際起きた出来事を書いたあの手紙だったのである。
もしかしたら出し忘れたとか?
いや、それはない。
わざわざ雑誌を買い、住所をしっかり書いた記憶がある。
それに郵便ポストは家の目の前にあった。
そこへ切手を貼ってちゃんと出したのも覚えている。
問題なのは何故、中の手紙だけは私の机の引き出しの中にあったのかという事……。
薄気味悪くなった私は、誰にも言えず、灰皿の上でその手紙を燃やす事にした。
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