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読書紹介板

1404アクエリアン:2019/04/27(土) 09:11:27
とても丁寧に書かれている本だと思う。特に序盤は何かを語り始めるたびに、説明を付けている。オウム事件を知らない人、昔のことで忘れたという人も多いはずで、良く配慮されていると感じた。井上を美しく清らかに描き過ぎと感じられるのは、本書の主人公だから仕方がないとしても、用語の解釈を中心として全体的にオウムに寄り過ぎている印象が強い。また井上を修行の天才として描くよりも、より普通の少年に寄せて描くべきだったのではないかと思う。確かに高校の休み時間中に椅子の上で座法を組み、瞑想している様子は変わった少年の印象を強めるが、そこは感化されやすい井上の特性を表すとした方が正確ではないか。またオウムは変わった人々の集まりと印象付けるのは、カルト宗教の拡大を予防する見地からも良くない。つまり普通の人はカルトに引っ掛からないという誤解を与えかねない。

井上の神秘体験を称賛するが、超能力者が聖者であるとは限らない。むしろそれは稀であり、さらに言えばその誤解こそ、オウム事件の最大の反省点の一つであったはずだ。麻原がヨーガにより神秘的な力を得ていたのは、裁判を含め多くの目撃談がある。実行犯の一部はそれに惹きつけられ、自分も修行を通じて神秘体験をしていく過程で麻原を絶対的に信じてしまったために、麻原の指示する犯罪行為に善悪の理性を働かせることなく従ってしまった。本書は井上の手記から要点を抜粋し、部分的に著者が説明を入れる形で進行する。そのために全体的に井上、しいてはオウムの価値観に引きずられるような感がある。著者の文芸的な力量を感じる文章だが、所々で読者の目を覚ますためのカウンター的な、井上やオウムに対する批判があっても良かったのではと思う。


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