もう一つ、「お母さんのバカ!」について蛇足の考察をしておきたい。この表現の x に入る人は親しい人に限られるように思う。もちろん呼び名を知っているからにはそれなりに交流のある相手ということになるはずだが、その親しい人に「の」を使うということ自体が、悪口として機能している可能性も指摘しておきたい。助詞の「が」と「の」は親しさで使い分けていた。ウチの人には「が」、ソトの人には「の」を使い、ソトの人に「が」を使うのは失礼であった。ならば、ウチの人に「の」を使うことも、心的距離を置くという効果があったのかも知れない。さすがにこれは考えすぎだとは思うが、幼い子供が親に「の」を使って、親が渋い顔をしながら訂正する様子を空想した。