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女子会板/2

200うー:2013/01/22(火) 22:10:10 ID:uISmJ.rA
     息子

 父は八十四歳、老人病院のお世話になっている。脳こうそくの後遺症で、
たまに首をかしげるようなことを言う。病院を「会社」と言ったり、旧海軍出身
なので「兵舎」と言ったりする。だけど看護師さんやスタッフの方々に親切にしていただき、
入院後は気持ちが穏やかになった。

 ある日、主人と私の妹の三人で面会に行った。ロビーで顔見知りの九十歳ぐらいのおばあさんと息子さんに
手招きされ、同じテーブルにつくことになった。おばあさんと父は固く手を握り合って、とても親しげだった。
おばあさんは、七十歳の息子さんを自慢げに私たちに紹介した。父も私たち三人を紹介した。
おばあさんは胸を張って、「私は息子を三人も産んだよ」と父に言い、「あんた、息子はおらんの?」と二度も父にたずねた。
 
 やや間があって、少々むっとした表情の父は「息子は....おったよ!」と言った。
私たち三人は思わず椅子からずり落ちそうになった。私たちは、以前からずっと二人姉妹である。
なおも父は続けた。「息子は二歳半で肺炎で死んだ」と。

 おばあさんは大きくうなずいて、「そりゃまあ気の毒なことやったなあ」と言った。
父はうなずき、いかにも満足そうであった。私は父の横顔を見ながら、一緒にうなずいた。
そして主人と妹に「これでいいのよね?」とたずねた。主人と妹は笑ってうなずいた。

清水貞子(58)主婦 大阪府柏原市 『夕焼けエッセー』産経新聞社


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